欧州保険会社を悩ませる修理代高騰
近年、事故による自動車修理が難しくなっていることが問題になっていますが、欧州でもこのままでは今の自動車保険モデルが維持できなくなると強い危機感を抱いています。
ドイツ保険協会やイギリスの業界団体のデータでは、近年の修理費が2~4割上昇し、複雑化した部品やADAS(先進運転支援システム)関連の修理・再キャリブレーションが保険支払を押し上げていると指摘。ADASのおかげで事故は減るはずなのに、保険料は下がらない(どこらか上がっている?)という現象が起こっています。
たかがフロントガラスの飛び石、されど…
ドイツの保険協会の報告によりますと、2024年のガラス損傷に対する保険支払総額は日本円で2,200億円に達していたことが分かりました。1件あたりの平均支払額は10年前から77%も上昇しています。車種によってフロントガラス交換だけでも40万円オーバーも…。
ハイテク過ぎるヘッドランプ
ポルシェ・タイカンのヘッドランプは片側32,768個のLEDマイクロチップが使われています。メルセデス・ベンツSクラスのヘッドランプも片側25,000個のLEDマイクロチップが使用されています。最近は、ヘッドランプが路面に路面凍結注意を促すアイコンを表示させたりする機能を有するものまであります。
例えばコツンと右フロント部を軽くぶつけ、バンパーとヘッドランプ交換になった場合、その修理代は100万円~200万円、あるいはそれ以上の高額になる可能性があります。
フロントバンパー再塗装はNG
最近の車は、自動ブレーキ等のセンサーがバンパー裏に内蔵されているため、フロントバンパーの再塗装を厳しく制限・禁止する(整備マニュアルで)メーカーが増えています。
- センサーへの干渉
塗装の厚みがわずかに変わるだけで、電波の透過率などが変化し、センサーの検知精度が狂うリスクがあるから。 - シビアな数値管理
塗膜の厚さを150μm以下等と極めて精密に指定するケース。
安全性を担保するため、少しの傷でも補修せず新品への丸ごと交換を推奨するマニュアルが一般的になりつつあるので、これも修理代高騰の要因になっています。
虚偽の請求や詐欺の増加
複雑な修理を逆手に取った、悪質な修理業者による詐欺も増えていると言われています。Insurance Europeの推計によれば、欧州の全保険請求の最大10%が何らかの詐欺を含んでいると言われています(摘発・未摘発を合わせた推計値)。ADAS修理の複雑さを利用した詐欺「キャリブレーション詐欺」は米国での事例が多く記録されているそうです。
保険会社の損害査定人でも、全メーカーの最新修理マニュアルや診断ツールを完璧に把握するのは難しく「本当にその作業が必要か?」を判断するのは困難。実際にはキャリブレーション作業不要なケースでも、保険会社にその費用を請求することもあるのでしょう。
過剰整備もやむを得ない事情
ただこの問題、修理業者側の立場から見ると、構造的にどうしても「過剰整備」に傾かざるを得ない事情があります。例えばフロントバンパー交換後のキャリブレーションを省略した場合、後日そのクルマが自動ブレーキの誤作動で事故を起こした、なんてことがあったら大変です。となると、「やらずに何も起こらないに懸ける」なんてリスクのあることは極力避けたい選択肢になります。
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