自動車メーカーがSDV化を進めたい理由
ドイツの自動車部品サプライヤーのボッシュ(Bosch)が、Nvidia、Microsoftと提携して開発したAI搭載コックピット技術を発表しました。
車内でAIと対話して操作やおすすめ店舗の検索・案内をしてくれる機能です。例えば、AIに「寒い」と伝えたら、エアコンやシートヒーターの設定を調整したり、「美味しいフレンチレストランを探して予約して」のような複雑な要望も会話を通じて処理してくれるそうです。
ボッシュは3,000億円以上の投資をしてこのAI搭載コックピット技術を開発した理由は、新たな需要を作らないと生き残れないからです。
従来のビジネスモデルの限界
従来のビジネスモデルは、車を1台売って得られる利益は基本的には1回きりです。車を維持する上で消耗品や壊れた部品が売れるので、その収益もありますが、自動車メーカーにとっては長期に渡って部品を管理するコストが膨れ上がるので、経営的に重い負担になるはずです。
ボッシュのような部品メーカーは、昔はボッシュにしか作ることができない精密な部品が存在しました。しかし、今は技術の平準化が進み、中国メーカー等が安価で高品質な部品を量産する時代。
なぜSDV化を目指すのか
SDV(Software Defined Vehicle)とは「ソフトウェアによって機能が決まる車」のことです。携帯電話に例えると分かりやすいかもしれません。
「ガラケー」と「スマホ」の違いに例えるなら、ガラケーが従来のビジネスモデル、スマホがSDVです。
| 比較項目 | 従来の自動車(ガラケー型) | SDV:次世代車両(スマホ型) |
|---|---|---|
| 製品の定義 | 「機械」。完成した状態で売る | 「動くコンピュータ」。未完成で売り、後で育てる |
| 性能のピーク | 納車時が最高。後は古くなるだけ | 納車後も進化。アップデートで性能が上がる |
| アップデート | 販売店へ行き、部品交換や有償修理 | 寝ている間にネット経由(OTA)で自動更新 |
| 機能の追加 | できない(買い替えるしかない) | アプリのように後から機能を購入・追加 |
| 故障への対応 | 壊れてから工場で修理(リアクティブ) | AIが故障を予兆し、事前に通知(プロアクティブ) |
| 資産価値 | 年数とともに下がる | 機能更新により、価値が下がりにくい |
| メーカーの収益 | 車両販売 + 車検・修理部品 | 車両販売 + 継続的なサブスク料 |
自動車メーカーがSDV化を目指すのは、従来の自動車ビジネスモデルでは、これ以上成長できないから。
SDV化にすることによって、販売後の収益を見込めるからです。
消耗品はSDV化を求めているのか?
では、一般的な消費者は自動車のSDV化を求めているのでしょうか?
恐らく、殆どの消費者はSDV化を歓迎しないと思います。その理由は、自動車購入後の出費を嫌うからです。
ガラケーからスマートフォンに移行した時は、利便性が飛躍的に向上したので抵抗無くアプリを購入したり、データ通信料を支払うようになりました。しかも、携帯電話=通話する手段でしたが、メッセージ送信や写真、動画の送信、ライブ配信もできるようになり、劇的に使い勝手が良くなりました。
自動車はどうでしょうか?自動車は
- A地点からB地点までの移動手段
- 雨風しのげて空調やオーディオが有る
この目的が変化することはありません。例えばSDVでサブスク料を支払えば「目的地到着時間が半分になる」これくらいの変化がなければ、消費者のメリットが無い気がします。
消費者にとっての悪夢は選択肢が無くなること
「選択肢がSDVのみになる」という状況は、消費者にとって悪夢になるかもしれません。
しかし、自動車メーカーも消費者が課金制度に敏感に反応することを分かっています。以前、BMWがシートヒーターのサブスク設定した際に、炎上したことがありますからね。
メーカーにとってもSDV+サブスクは大きな賭けで、匙加減を模索しているのだと思います。
トヨタの考えるSDV
6代目となる新型RAV4は、トヨタのSDV本格導入第1弾になります。SDVではありますが、積極的に消費者からお金を徴収する制度ではないので、「後からお金を払わされる」という不快感は無いですね。
トヨタの考えるSDVは、交通事故をゼロにすることだと豊田章男会長は述べていますので、そもそも目指すところが違うのかもしれません。トヨタがこのスタンスを貫けるのは、今でも売れてるから(圧倒的な稼ぐ力があるから)でしょうね。
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