欧州自動車メーカー苦境の原因はEV化ではない?

2025年10月12日

日本人として、自国(日本)の自動車メーカーに頑張ってもらいたいのは当然。ただ、欧州車を取り扱っている弊社としては、欧州の自動車メーカーにも頑張ってもらいたい気持ちもあります。

今日は欧州の自動車産業が今、まあまあヤバい状況であることについてのお話です。

まずはドイツの自動車産業

10/3にも、ドイツの自動車産業は2030年までに10万人近くの雇用を失うと予想されている件についてのブログを書きました。

中国自動車メーカーの躍進によって、競争力格差が生まれ、ドイツの自動車部品サプライヤーが苦戦するという内容でした。主に自動車部品メーカーの内容でしたが、自動車メーカーも厳しい状況です。

2025年8月のドイツの鉱工業生産は、前月比で予想をはるかに上回る4.3%の大幅な減少を記録しています。自動車産業の生産が18.5%も減少したことが大幅減少の主な要因です。

なぜ18.5%も減少したのか?

2025年8月のドイツの自動車産業の生産が18.5%も減少した理由は、モデル切り替え、アメリカの関税発動前の駆け込み需要終了による生産急減等、複数の要因によりものです。エコノミストたちは、すでに第2四半期に0.3%縮小したドイツ経済が、第3四半期も再びマイナス成長に陥る懸念が強まっています。*8月は夏季長期休暇がありますが、カレンダー上の要因による生産の減少分は、あらかじめ統計的に取り除かれた季節調整済みデータとして公表されます。

ドイツは、2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、ロシアからの安価な天然ガス供給が途絶えました。それまでドイツの自動車産業は発電と産業の熱源(塗装の乾燥や金属部品の熱処理等)としてロシア産ガスを大量に使用していました。ドイツの自動車産業にとって、エネルギーコストの高騰がジャブのようにジワジワと企業の採算性を悪化させています。


イタリアの自動車産業は?

イタリアの自動車産業はドイツよりも深刻です。イタリアの 2025年1月〜9月までの自動車生産は36.3%減少と、過去最低水準に落ち込んでいます。商用車を含めた総生産台数も31.5%減少しています。

なぜ36.3%も減少したのか?

イタリアの自動車生産が大きく落ち込んだ理由は、今の売れ筋の大衆車がFiat Panda 1車種に依存しているからです。ところがそのパンダですら、新型のグランデパンダから生産がセルビアに移管されて、生産が29%減少。

工場が休みの日の方が多い

また、フィアットはミラフィオリ工場やモデナ工場は生産が極端に低迷。特にカッシーノ工場は、この9ヶ月間で生産日数よりも休業日数の方が多いという深刻な事態に陥っています。


フランスの自動車産業は?

フランスの自動車メーカーは利益率が高水準で、ルノーに至っては2024年にいは過去最高の営業利益を記録しています。

しかし、自動車部門の貿易収支(輸出入の収支)としては、大きな赤字になっています。フランスから輸出された自動車および関連部品の金額よりも、外国から輸入された自動車および関連部品の金額の方が大幅に上回っています。こうなると、フランス国内の工場や雇用の基盤が弱くなり、その結果として「産業の空洞化」が進行し、フランス経済全体の重荷となります。


欧州の自動車産業衰退はEV化が原因?

よく言われるのは、欧州がEVシフトに舵を切る政策が、欧州の自動車産業を衰退させた、と言う意見。

確かにEVシフトの影響は大きいのですが、それが諸悪の根源とまでは言えません。EVシフトがなかったとしても、遅かれ早かれ欧州自動車メーカーは苦境に立たされる時が来ていた可能性が高いからです。

中国自動車メーカーの躍進、技術的優位性の低下。グローバル競争による利益優先主義がもたらした生産拠点の海外移転、それによって国内産業が空洞化(イタリア・フランス)。ロシア産ガスの供給途絶によるエネルギーコスト急騰(特にドイツ)、自動車販売の中国依存(特にドイツ)等、複合的な構造的問題と外部環境の激変が組み合わさって生じた問題がEVシフトによって加速した、と言うのが正しいのだと思います。

その対局に位置するのが中国の自動車メーカー。中国自動車メーカーのプラスとなる側面が、EVシフトによって成長を加速させたと言えます。


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