ドイツ自動車産業「雇用10万人消失」の衝撃
ブルームバーグの分析によりますと、ドイツの自動車産業は2030年までに10万人近くの雇用を失うと予想されています。
これは、自動車メーカーだけの数字ではなく、そこに部品を供給しているボッシュ、コンチネンタル、ZF、シェフラーのようなTier 1サプライヤー、Tier 1サプライヤーに対して部品や素材を納入するTier 2サプライヤーも含まれています。
特に、Tier 1サプライヤーは長年ドイツ経済を支えてきた「産業の柱」です。日本で例えるなら、トヨタ自動車のTier 1サプライヤーは、デンソーやアイシン、豊田自動織機等なので、その影響がいかに大きいか分かりますね。
ドイツの自動車産業が広範囲に雇用を失う可能性がある理由は、中国企業の台頭。BYD等の中国自動車メーカーが勢力をつけていると言う事は、そこに部品を供給しているサプライヤーも比例して力を付けてきます。ドイツの部品サプライヤーや、中国の部品サプライヤーと同じ土俵で戦わなければなりません。
守りの策では勝てない、ドイツ部品大手と中国勢の決定的な差
とにかく中国市場では開発スピードとOEMの動きが圧倒的に速く、技術革新のペースも目まぐるしい速度。
ドイツがこれまで得意としてきた高効率化と高付加価値。しかし、効率化と高付加価値化の追求には限界があるという認識は、ドイツの製造業が直面している最大の壁の一つです。そして、中国がその限界を超えた速度、量に加え、価格の安さを組み合わせているので、ドイツは厳しい状況に立たされています。
ドイツの自動車部品サプライヤーは、人員削減やコストカットで中国勢に対抗するという、守りの措置を取ろうとしています。しかし短期的には乗り切れても、長期的にはさらに競争力を弱める恐れがあります。
ドイツ衰退の深層:競争力格差を生んだ3つの構造問題
ドイツと中国との競争力の差は、
- 労働・生産モデル
- 技術革新の方向性
- 政治的意志と社会統制
が生み出していると思います。
1.労働・生産モデル
中国では、朝9時~夜9時まで、週6日働く996勤務が珍しくありません。BYDやCATLのような企業の開発チームは24時間体制で稼働しています。この速度そのものが大きな競争力になります。
また、中国の部品サプライヤーは下請けや下位ティアに行くほど、労働環境が過酷になり、低賃金の労働力を使って競争力を確保しています。
一方のドイツでは下請けであっても高い人件費と充実した社会保障があり、労働時間が週35~40時間で長期休暇もあります。また、ドイツの自動車業界は世界トップクラスの強力な労働組合であるIGメタルに加盟しています。
2.技術革新の方向性
ドイツのサプライヤーがこれまでに巨額の投資をしてきたエンジンやトランスミッション、複雑な燃料システムの工場や設備とそれに関わる専門技術者のスキルは、EV時代ではその価値が急激に下落します。
また、ドイツの企業は完璧なハードウェアを作る文化が根付いているので、中国勢のスピード重視の開発文化に対抗できません。過去の成功体験が足かせになって思い切った方向転換が困難になっています。
「ディーゼルだ!→ EVだ!→やっぱりハイブリッドやEV??」
このどっちつかずの状況が、各部門の維持や収益確保にリソースを割かなければならず、二兎を追うジレンマに陥っています。
3.政治的意志と社会統制
中国ならではの強味は、サプライチェーン下層の過酷な労働環境等、国の経済成長のためなら多少の犠牲があっても黙認する。成長分野であれば補助金投入や税制優遇、土地の提供等、政府は露骨な贔屓をする。また、それらの戦略に異議があってもその声を力で抑え込みます。
ドイツのような民主主義・高福祉国家では実現不可能な方法で競争力を得ているのが中国企業です。
この構造、日本も他人事ではありません。今のところトヨタ自動車はとても上手くやってきましたが、日本の自動車産業もドイツと同じ構造的な課題に直面しています。
日本車も東南アジアでは中国勢にシェアを奪われ始めていますので、どうやって中国勢に対抗するのか気になりますね。守りに入ってしまったらやられてしまうので、日本の新たな強みを定義し直す必要があります。
好きな車と、暮らそう。
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