それでも中国自動車メーカーの脅威は変わらない
最近YoutubeやSNSで、中国の自動車メーカーは「終わった」「大量倒産する」といった投稿をよく見かけます。とりわけBYDに関する投稿が多いですね。
マスコミも、売れ残った新車EVが大量放置されている映像と共に、今の中国自動車メーカーの現状を報道しています。
しかし、結論から言えば、YouTubeやSNSで叫ばれているほど、中国の自動車産業は危機的な状況ではありません。ただし、倒産するメーカーは多数存在しますが、それは淘汰戦の敗者が決められているだけ。その裏には、私たちが知らない『独自の構造』が存在しています。
1. 中国自動車業界の現状
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過剰生産とデッドストック
補助金と投資ブームでEVメーカーが乱立し、生産台数が膨らんだ結果、売れ残りの新車が放置される事態が発生。 -
値引き競争の激化
「内巻(ネイジュアン)」と呼ばれる過当競争で値引き合戦が続き、利益率は圧迫。 -
淘汰の進行
小規模メーカーは資金難で倒産、アプリやアフターサービス停止により消費者が被害を受ける例も増加。
2. それでもBYDは倒産しない
YouTubeやSNSでは特にBYDには巨額な負債があり、「恒大集団のようになる」等と危機的状況であることが叫ばれています。莫大な負債額や、雨ざらしにされた大量のデッドストックの映像を見ると、誰でも「危ないんじゃない?」と感じるのは当然のことだと思います。日本の企業経営や市場の常識に照らし合わせれば、BYDはYouTubeで言われているように危機的状況なのかもしれません。それを見た人達も「いよいよか!」と思うかもしれませんが、そう簡単にBYDは倒れません。
その理由は
- 政府の強力な後ろ盾
EV産業を国家の戦略的な柱と位置づけている中国政府は、BYDのようなリーディングカンパニーに対して、資金繰りに行き詰まらないよう、手厚い支援を継続します。市場の原理を超えた”国策”と言う後ろ盾があるのです。負債が多かろうが、国家が「必要」と判断すれば延命させられる、言い換えれば「潰れない」のではなく、「潰させない」でしょうか。 - 垂直統合モデル
中国の自動車メーカーを語る際に頻繁に出てくる言葉が垂直統合。バッテリーや半導体などの主要部品を自社で開発・生産する垂直統合体制により、コストを大幅に抑え、激しい価格競争にも耐えることができます。 - グローバル市場での成長
中国国内の厳しい過当競争をしつつ、ヨーロッパや東南アジア、南米など海外市場への輸出を積極的な拡大を目指しています。海外での売上増加は、BYDのキャッシュフローを大きく改善させる可能性があります。競争が厳しい中国国内で儲からなくても、違う戦場で利益を出せればよいと言う考え方。 - 多くの犠牲の上に成り立つ構造
BYDのような圧倒的な交渉力を持つ大手メーカーは、欧米や日本では絶対に許されないであろう犠牲の上に成り立つ構造があります。下請け企業には無茶な納期やコストカットを押し付け、劣悪な環境や条件で労働させられている人たち。中国メディアでは報じられにくい過労死等も多いと言われています。下請けに関しては、Dチェーンと呼ばれる下請け企業にとって不利な支払いシステムを利用しなければなりません。
4Sショップと呼ばれている中国の自動車ディーラーは、売れる見込みがなくても大量に在庫車両仕入れを押し付けられ、体力のないディーラーは閉店・倒産が続出。
3.強者は守られる
このように、中国の苛烈な過当競争による淘汰戦に生き残ることができた企業は、圧倒的な力をつけて世界市場でも十分戦えるようになります。
先ほど、“多くの犠牲の上に成り立つ構造”のところで説明しました通り、この淘汰戦では多くの犠牲者や敗者が出ます。この犠牲者や敗者は自動車産業進化コストとして許容されます。多くの犠牲を積み上げて一部の勝者を作り出しているのが中国の産業構造。
この構造において敗者のたどる道は悲惨だと思います。その多くが窮地に追い込まれ、路頭に迷うことになるのでしょう。
もしこれが欧米や日本だった場合、労働者や下請け企業が団結して集団訴訟を起こすこともできるでしょう。しかし、中国の司法は、共産党の強い影響下にあります。政府が国策として推進するEV産業ですから、司法が勝ち残った企業や政府に不利になる判断は望めません。
つまり、多くの敗者は法的救済を求めようとはせず、厳しい現状を受け入れるしかないのです。
走り出した中国のEV国家戦略は、もう止めることはできません。歴史のある既存の自動車メーカーも、多かれ少なかれ必ず何らかの影響を受けることは避けられません。
じゃあ、絶対に中国の勝ち残った自動車メーカーは安泰なのか?と言われたら、必ずしもそうとは言えません。
中国の自動車メーカーが本当に危機的状況に陥るとしたら、それは負債やデッドストックではなく、恐らく海外市場を封鎖された時か、他国の競合他社がゲームチェンジャーとなる画期的な技術を開発した時だと思います。
- 海外市場封鎖
安全保障やダンピング防止等、破壊的脅威を理由に政治的圧力で封じ込められた場合。 - ゲームチェンジャーの登場
例えば中国国外のメーカーが全固体電池の量産に成功する等。ただし、その逆(中国メーカーが開発に成功)もあり得るので怖い。
自国の産業の衰退を目の当たりにしたくないので、ライバルに上手く行って欲しくない、と思うのは自然なことです。しかし、淘汰戦で混乱はしていますが、YouTubeで言われている程、中国の自動車産業は危機的状況ではないと思います。
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