BYDのDチェーン(迪鏈)が引き起こす新たな金融リスク
迪鏈(Dチェーン)と呼ばれるBYD独自のサプライチェーン金融(SFC)をDチェーンと呼びます。
Dチェーンの仕組みを簡単に説明しますと
- BYDがサプライヤー(下請け企業)に部品を発注
- BYDはサプライヤーへの支払手段として、”迪鏈(Dチェーン)”と呼ばれるデジタル債権を発行
- サプライヤーはBYDから受け取ったDチェーンを保有
- サプライヤーは保有しているDチェーンで他の企業への支払いをしたり、金融機関で現金化することもできる。ただし現金化は8~10%の手数料を引かれる。
このDチェーンは非常に賢い戦略で、サプライチェーンを通じて資金を調達できる画期的なシステムです。
DチェーンはBYDにとって大きなメリットがありますが、その反面、サプライヤーにとってはハイリスクなシステムと言えます。
サプライヤーにとってハイリスクである理由は複数あります。
BYDへの強い依存
DチェーンがBYDの信用力に大きく依存しているため、BYDの経営状況が悪化して債務不履行に陥ってしまうとサプライヤーは資金回収が困難になります。仮にそうなっても、BYD独自の金融システムなのでサプライヤーが補償を受けることは難しいと考えられます。
高い手数料負担
Dチェーンは現金化する際に8~10%の手数料を負担しなければならないため、サプライヤー側の利益が減ってしまいます。BYDがサプライヤーに対して現金化を推奨していない、あるいは抑制しようとしている意図があるのでは?
強制と囲い込み
BYDはサプライヤーに対して事実上Dチェーン払いを強制しています。サプライヤー側としては現金で支払って欲しくても、圧倒的に立場の強いBYDに
「Dチェーン払い以外認めない!」
と言われたら、”受け入れる”か”仕事を断る”の2択になります。一度受け入れたらDチェーン払いに依存することになり、BYDの下請けとしての仕事から抜け出し難くなります。もっと強い言い方をすると、BYDに支配される形になります。
弱い立場が確立される
囲い込まれて支配下に置かれてしまったらBYDが支払いを遅らせたり、値下げの要求してきても断ることが難しくなる構造が出来上がり、条件の悪い仕事でも引き受けざるを得なくなります。
BYDにとってDチェーンのメリットは資金調達やサプライヤーを囲い込んだるすることだけではありません。もう一つ大きなメリットがあって、それは財務状況の見栄えを損なわないことです。大きな負債があっても表面化し難いのです。Dチェーンによるオフバランス化によって、投資家は誤った判断をする可能性があります。
しかし、最近香港に拠点を置く独立系の調査会社のGMTリサーチが、BYDがDチェーンの利用によって大きな負債を隠している可能性を指摘。その負債の金額が440億ドル(日本円で約6.8兆円)に近い水準に達しているそうです。
今後Dチェーンが爆弾になる可能性があります。
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