EUの規制でこのままだと小型車が消える?

2025年5月7日

「EUの自動車に対する規制が小型車の収益を圧迫している」
「このままでは生産縮小により自動車生産工場閉鎖を余儀なくされる」

こう述べて、EUに対し小型車向けの規制緩和を求めたのは、ルノーのルカ・デメオCEOとステランティスのジョン・エルカン会長です。

この問題、小型車が売れていないわけではありません。以下は去年のBセグメント(トヨタ・ヤリスクラス)の年間販売台数です。

メーカー(ブランド) モデル名 2024年販売台数(台)
Dacia(ルノー傘下) Sandero 270,111
Renault Clio 216,569
Volkswagen Golf 216,549
Volkswagen T-Roc 203,611
Peugeot 208 199,820
Toyota Yaris 180,806

台数が売れていても利益に結びつかないので、

「それをなんとかしてくれ」

と言いたいのです。

小型車はなぜ利益が少ないのか

なぜ小型車が利益が少ないのでしょうか?小型車は販売価格そのものが安いので中型~大型車よりも利益は少ないのは当然のこと。しかし、小型車は昔から製造販売していますよね。

その答えはルノーやステランティスのトップがEUに求めた

“小型車向けの規制緩和をして欲しい”

にあります。

自動車は常に進化を強いられる工業製品です。自動ブレーキや歩行者検知システム、車体剛性強化、年々厳しくなる環境規制に対応しなければなりません。厳格化する排出ガス規制はクリアできなければ巨額なペナルティを受けることになります。

今の規制は不公平?

ここで注目したいのは、EUに規制緩和を求めているのがルノーとステランティスで、ドイツの自動車メーカーが入っていないことです。

車両本体価格が高い車両は、規制対応のコストを目立たないよう吸収できます。

簡単な例で説明しますと

規制対応コストが2,000ユーロだとします。

車種分類 車両価格(ユーロ) 規制対応コスト 規制対応コストの割合
小型フランス車 €16,000 €2,000 12.5%
ドイツの大型SUV €50,000 €2,000 4%

小型車は規制対応コストの影響を受けやすいと言えます。実際、欧州で誰でも買える低価格の車が消えつつあります。

メルセデスやBMW、アウディ等のドイツの自動車メーカーは、主に輸出に重点を置いています。輸出する高額車両はより重く、より複雑にして、付加価値を増やして高価格になった方が儲かります。

ルノーとステランティスは何を求めているか?

両社とも具体的にどうしてほしいかについては、現時点では明言を避けていますが、小型車の製造コストを抑え、利益率を向上させるために規制緩和を求めていることは確かです。

EUは自動車メーカーにかなりハードな規制を強いて来ました。しかし今回の両社の要求から、いよいよこの規制に耐えられなくなってきたことが分かります。

もちろん、環境保護や安全性向上は重要です。問題はその負担のバランスですね。”規制”と”持続可能な移動手段”をどう両立するのか、今後の議論・提案が注目されます。


好きな車と、暮らそう。

AUTORIESEN

サービス工場Blog
車検、点検、整備のあれこれを毎日更新!
熟練のメカニックの匠の技をご覧頂になれます。