自動車の「修理をする権利」をどこまで守るべきか

2026年3月21日

近年の自動車は電子制御化が進み、それをコンピューターでコントロールしています。これによって、DIYで自分でバッテリー交換したり、エンジンオイル交換のような、基本的な作業であっても、車両によってはリセット作業や診断機が必要になるケースが増えています。

さらに問題なのは、こうした電子制御化に伴い、車両の診断や修理に必要なデータや機能がメーカー側に強く依存するようになっている点です。車両の診断機を使いこなせない古くからある個人経営の整備工場では、廃業に追い込まれるケースも少なくありません。

最近アメリカではRight to Repair(修理する権利)を巡る議論が、こうした背景をもとに政治的なテーマにまで発展しています。

典型的な先行事例

この”修理する権利“には典型的な先行事例があります。それはiPhoneです。基本的にApple Storeでしか直せないという閉鎖的な状況でした。しかし、近年はSelf Service Repairという制度も用意されていて、自分で修理することができるようになっています。現時点で日本はまだ対象外ですが…。

問題の本質はデータへのアクセス権

iPhoneと違い、自動車の場合は専用工具以上に重要なのがデータへのアクセス権。メーカー専用の高額な純正ツールを使用しなければ、消耗品ですら交換が難しくなりつつあります。現段階では、独立系の自動車整備工場の汎用ツールでもある程度データベースに入り込むことは可能。

間違えないで欲しいのは、修理をする権利は「データへのアクセス権を全て解放しろ」という訳ではありません。

「通常の整備や修理が成立するために必要な最低限のアクセスを確保すること」

「これ以上、メーカー主導でアクセス制限を強化しないこと」

この2点が争点にるのです。

修理する権利への高い支持

アメリカではRight to Repair(修理する権利)は非常に高い支持率を持っていて、75~85%が賛成。しかも民主・共和どちらからの支持者も同程度に支持しています。

こうした声によって、今後法規制・ルール化が進む可能性があります。データアクセス義務化や診断情報の開示、独立整備への配慮等。

全てOPENにするのは危険な理由

弊社は自動車の修理を行っているので、できる限りデータへのアクセス権をオープンにはして欲しいと思っています。しかし、だからといって完全解放して欲しいとは思いません。

もし完全解放したら…

  1. 環境無視のパワーアップ
    ・排ガス制御の無効化
    ・出力制限の解除
  2. 保安基準無視のカスタマイズ
    ・灯火類の点灯や点滅パターン変更
    ・ADASの設定変更
  3. 盗難への悪用
    ・キーの複製が容易になる
    ・イモビライザー無効化
    ・CANインジェクション無効化

これらが簡単にできるようになってしまいます。また、技術が無い人が整備できてしまう事によって、予期せぬ不具合が発生し、メーカーにとってはそれが大きなブランドリスクにもなります。

今後のSDVの設定に影響がでるかも

政治が動くことによって、現在進行形で普及が加速しているSDVの設定に何らかの影響を与える可能性があります。自動車メーカーも修理する権利を意識しつつ、設定を調整するのだと思います。


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