恐ろしいほど上手く行っているフェラーリのブランド戦略
フェラーリの最高責任者のベネデット・ヴィーニャ氏が、2024年に新車のフェラーリを購入した新規顧客の40%以上が40歳未満だったと発言しています。
これを肯定的に捉えるべきか、否定的に捉えるべきかで言うと、間違いなく前者です。
例えば以下の2パターンがあった場合
・憧れのフェラーリに、一生に1度だけ買ってもらう
・フェラーリの素晴らしさを知ってもらい、30歳、40歳、50歳、60歳と4回買ってもらう
間違いなく4回買ってもらった方が良いですね。
ブランド戦略として若年層に興味を持ってもらえれば、その中の一定数が一生涯のお付き合いができる顧客になります。
どの自動車メーカーもそうなることが理想なのかもしれませんが、フェラーリと言うブランドが揺るぎない地位を確立しているからそれができるのであって、一般的に消費者は、価格、デザイン、燃費、装備、スペック等の優劣によってブランドを乗り換えるものです。
このマーケティング戦略はフェラーリだけではなく、エルメスやロレックス等も同じ路線ですね。これは一般的にブランドロイヤルティ戦略と呼ばれていますが、他ブランドに排他的になるほど強い囲い込みを実現させるのは容易なことではありません。また、どうしてもこの手法だと、市場規模を大きく拡大することは難しくなります。しかし、それでもこの戦略が上手く行っているのは世界の富裕層がどんどん増えている証拠です。
因みに
2024年の新車のフェラーリ販売数は13,725台。
最も売れてた国はアメリカの3,527台。
2位がドイツの1,827台
3位は日本の1,445台
同じメーカーの車両を購入することは、フェラーリだけが特別かと言われると必ずしもそうとは言えません。
「私はずっとトヨタに乗り続ける」
「ホンダに乗り続ける」
と言う消費者もいます。
何が違うかと言うと、情緒的ロイヤルティと実利的ロイヤルティだと思います。ロイヤルティ(あるいはロイヤリティ)とは信頼感や愛着を意味します。英語表記でLoyaltyですが、Royaltyは違うい意味になるのでお間違いなく…。
フェラーリが情緒的ロイヤルティ
大衆メーカー車が実利的ロイヤルティ
に当てはまります。
情緒的ロイヤルティは、ブランドへの強い愛着があり、たとえ低価格でもっとスペックや装備が充実している他社製品が存在しても、
「それでは駄目、フェラーリ以外認めない!」
という感情が勝るケースがそれです。
一方、実利的ロイヤルティは
・今まで買っていて機能的にも価格的にも満足してるからリピートする
・購入ディーラーの立地が良いから他の選択肢を避ける
・他社の車に乗り換えるスイッチングコストを避けたい
・現状維持バイアスにより心理的に他店での購入を避ける
これらが、他の購入動機に勝るケースです。
情緒的ロイヤルティは消費者との結びつきがとても強いのが特徴。実利的ロイヤルティは一定の許容範囲を越えると他のメーカーに乗り換える可能性が高いのです。
Fortune誌によると、フェラーリは2024年に販売された新車の約81%は、既にフェラーリを所有していたそうです。さらに、フェラーリを所有していた購入者のうち48%は、複数のフェラーリを所有しているとか。
2023年には40歳未満の顧客が全体の30%だったのですが、それが1年後の2024年に10%も増加ているので、フェラーリの戦略は本当に上手く行った特殊な例だと言えます。まずはエントリーモデル(と言っても高額)を購入してもらい、徐々に上級モデルを目指してもらう。さらにフェラーリが強い信頼関係を築いたと認定された上顧客にはXXプログラムやアイコンシリーズを購入できるインビテーションを送るのでしょう。
さて、弊社でも他店での購入という選択肢がある中、乗り換えのたびに当社で車両をご購入いただく、大変ありがたいお客様がいらっしゃいます。修理・メンテナンスについても同様です。フェラーリのようなブランド力はありませんが、実利的ロイヤルティにプラスアルファの価値を提供し、既存のお客様を大切にしていかなければならないと改めて実感しました。
好きな車と、暮らそう。
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