低価格EVが売れ始めたフランスで新たな頭痛の種

2026年11月7日

補助金に頼った高額モデルの特需が一巡した欧州のEV市場。フランスではシトロエンë-C3やルノーRenault 5 E-Tech等、2万ユーロ前後(日本円で約350万円)で購入できる手頃なコンパクトEVが投入され、一般層への普及が進み始めています。2026年秋のフランスでの新車販売は、100%電気自動車(BEV)のシェアは4割を超え、普及フェーズが一般ユーザーへ拡大する局面を迎えたと言えます。

EVが増えるということは、充電インフラの需要も増加することになりますが、このタイミングで新たな頭痛の種が問題になっています。

急速充電器のケーブル盗難が1年で10倍に急増

その頭痛の種とは、急速充電インフラを狙った充電ケーブルの強盗・盗難の急増です。フランスの充電インフラ業界団体、Charge Franceが公開したデータ(仏紙Le Figaro等報道)によりますと、2026年の最初の10か月間だけで、全土約1,000か所の充電ステーションが被害に遭いました。

2025年通年の被害数が約100件程度だったことを考えますと、わずか1年で被害件数が10倍に跳ね上がった計算になります。この盗難被害による充電事業者の物理的な損害額は、年初からの累計で2,100万ユーロ(約37億円)規模に達しています。

なぜ急速充電器のケーブル盗難は厄介なのか

狙われているのは普通充電器(AC)に使用するケーブルではなく、高出力急速充電器。この被害が極めて厄介である理由は…

  1. ケーブルが固定式なので、切断=即稼働停止
    高圧・大電流を流す急速充電器のケーブルには、銅線以外にも冷却するための液体(クーラント液)を循環させるためのチューブが通っています。ケーブルを切断されると、その充電ポートは物理的に使えなくなります。

  2. 盗む側の手間と利益に対して、被害が大きすぎる
    急速充電器ケーブルの盗難は、油圧カッターなどを用いて夜間に短時間で切断し持ち去る手口。窃盗犯がケーブルを切断して手にする銅の換金価値は、1本あたり30〜80ユーロ程度(日本円約5,000〜15,000円)という報道があります。しかし、事業者側がそれを修復するには、水冷機構付きの高額パーツ代や有資格技師の施工費等を含めると、1口あたり1,500〜8,000ユーロ(約26万〜140万円)もの復旧費用がかかります。

    過去にかなり高額な被害も報告されていて、セーヌ=エ=マルヌ県のリユーサンでは、26万ユーロ(約4,600万円)の損害を受けた事業者もあります。

  3. すぐに修理できない
    高出力急速充電用のケーブルは普通充電器のケーブルと違って特殊でし。部品サプライチェーンや施工手配の関係で、切断されてから復旧するまでに数週間から数か月を要するケースも珍しくないそうです。当然それまでの間、その充電器は収益がゼロになります。

ケーブル盗難が与える影響

このケーブル盗難被害の多発は、事業者側の金銭的損失だけにとどまらず、EVを日常の足として使い始めたドライバーにも影響をもたらします。

特に低価格帯のコンパクトEVはバッテリー容量が30〜40kWh前後と控えめなため、遠出の際は高速道路や主要幹線道路でこまめな急速充電が必要です。しかし、移動先の充電ステーションに到着した際、急速充電器のケーブルが切り落とされていたら次の充電スポットを探さなければなりません。

また、急速充電ステーションには通常数台~10台位の充電器が設定されています。充電ステーションのケーブルがまとめて盗まれると、近隣の無事なステーションへ車が一斉に流れます。特に週末や連休中の急速充電スポットで充電待時間が増えてしまう可能性があります。そして、このまま盗難被害が増え続けた場合、防犯コストや修理コストの分を回収しなければならなくなり、充電事業者が充電価格を上げる可能性があります。

厳罰化とインフラ防犯対策の急務

事態を重く見たフランスでは、警察の取り締まり強化に加え、急速充電器を鉄道や電力網と同等の重要インフラとしての保護を政府に求める動きが出ています。防犯対策もそれなりに行われていますが、無人の充電ステーションはどうしても限界があるようです。


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