先進国の環境対策が生む新たな公害
欧州や日本等の先進国で乗られていた中古車は、かなりの台数がアフリカに輸出されています。アフリカで人気のある中古車は、耐久性の高い車が好まれます。ところが、耐久性が高いと思われていた特定の車種がアフリカに輸出された後、時限爆弾的にトラブルが多発しています。
DPF搭載中古車両が大量に輸出される
先進国では環境規制の優等生として多くに自動車メーカーが採用していたDPF搭載車。DPF搭載車とは、マフラーの途中に「ガスの中の黒煙(スス)をキャッチして燃やしきる特殊なフィルターを備えたディ―ゼル車のことです。
2009年に欧州では排ガス規制のユーロ5が導入され、ディーゼル乗用車へのDPF搭載が事実上義務化されました。
それから十数年が経過すると、先進国で乗られてきたDPF搭載車は古くなり、低中所得国に輸出され始めます。その大半がアフリカでした。
DPF搭載車両という時限爆弾
先進国では問題なく走行できていたDPF搭載車ですが、新天地であるアフリカに渡ってしばらくすると、厄介な故障が多発しました。エンジン警告灯が点灯、出力制限や走行や再始動不能、黒煙の排出やEGRバルブ固着、ターボチャージャーの破損等。
DPF搭載車に故障が多発した理由は、燃料の違い。先進国の軽油は硫黄分が10ppm以下と、ほぼゼロでした。ところがアフリカでは、軽油の硫黄分が2,500〜10,000ppm以上と高く、これがDPFが内部に付着して化学反応を起こせなくしてしまい、ススを燃焼させることができなくなります。このススが蓄積されると、車は壊れます。
また、アフリカの都市部では、急激な車の増加でインフラ(道路の整備)が整わず、渋滞で低速走行を繰り返したことも故障の原因となるDPFへのスス溜りを加速させました。
自動車メーカーの責任範囲外の問題
原因がはっきりしていますが、自動車メーカーの技術者は、あくまで先進国で乗られることを想定していました。しかし、中古車として硫黄成分の高い燃料の国へ輸出されることを想定する義務はありませんでした。
DPF搭載車の取扱説明書には、必ず「超低硫黄軽油(ULSD / 硫黄分10ppm以下)をご使用ください」のような説明が明記されています。
EU車両循環規制が公布された
自動車メーカーにとって、「中古車として輸出されたDPF搭載車がトラブルを起こそうが知ったことか!」なのかもしれません。しかし、排出ガス問題は国境を越え、地球規模の環境負荷を考えると無視することはできません。
先月(2026年7月24日)、欧州議会がEU車両循環規制の最終承認を行い、その中に高排出・整備不良の中古車の輸出禁止が正式に盛り込まれました。中古車輸出が厳格化されることになります。廃棄時にリサイクルするだけでなく、車両の開発・設計段階から環境負荷を減らすルールが法的に義務付けられました。
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