JLRを蝕み続けるランサムウェア攻撃の後遺症
去年の夏、ジャガー・ランドローバー(以降JLR)がランサムウェア攻撃を受けました。
生産工場が停止してしまった当時「数週間の辛抱だ」と思われていました。11月中旬には工場の稼働は再開し、新型レンジローバーも生産されるようになりました。
一件落着…、ではなかった
表向きには復活しましたが、JLRの財布事情は非常に厳しい状況で、ランサムウェア攻撃で受けた大きなダメージの回復の道のりは険しいようです。
2.6億ポンドの損失
システム復旧費、工場が止まっていた間に約2.6億ポンド(日本円で約550億円)の損失が出ました。この損失が平常運転での臨時損失ならまだ良かったのですが、生産停止の影響を受けた第3四半期(10月~12月)の売上は39%減(恐らく15億ポンド程)の減収になってしまったので、損失の補填ができない状況に陥りました。
その結果、民間から5億ポンドのローンを組み、英国政府から15億ポンドの融資保証を受けました。
英国経済全体の損失は約19億ポンド
JLRのサイバー攻撃による影響は、JLR本体とその関連企業・サプライチェーンを合わせて英国経済全体で約19億ポンド(日本円で約4,000億円)の損失と推計されている、という報告が出ています。これは英国経済史上最も損害の大きいサイバー攻撃と言われています。
親会社のタタ・モーターズのサポートは?
JLRはインドのタタ・モーターズの傘下です。親が金持ちなら親の金で助けてもらえば良いのでは?とは行かなかったのが今回のランサムウェア被害です。
2026年2月5日の発表によると、タタ・モーターズ(旅客車部門)は348.6億ルピー(約610億円)の純損失を記録。前年同期は5,485億ルピーの黒字だったため、JLRのサイバー攻撃が黒字企業を赤字へ叩き落としました。タタ・モーターズのさらに親のタタグループが支援できなくもない損失ですが、JLRは独立採算、英国企業としての経営自主性を尊重する形で運営されていました。
タタが安易に現金を出す=市場心理や格付け面で逆効果になり得ます。英国支援の融資保証を使うことで、JLRが自立していることをアピールする必要があったのでしょう。
ランサムウェア攻撃の副次的被害
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ナンバーが取れない
システムが止まったため、工場に完成車があるのに、陸運局への登録(データ送信)ができず、顧客に納車できなかった。 -
給与明細から情報流出
システム復旧の過程で、従業員の銀行口座や住所が流出したことが判明し、さらなる二次被害の対応に追われた。 -
鉄鋼メーカーの悲鳴
JLRに鋼材を納めていた会社は、車種に合わせてミリ単位でカット・加工された鉄板が、JLRの工場停止で行き場を失い、倉庫で山積みになって錆びていくのを眺めるしかなかった。
ランサムウェア攻撃前の成長軌道に完全復帰するまで、少なくともあと1~2年はかかると言われています。JLRは超高級EVブランドとして成功することを目指していましたが、まずはランサムウェアのダメージ回復に注力せざるを得ない状況です。自動車メーカーのランサムウェア攻撃は経済へのダメージが大きいので本当に恐ろしいですね。
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