しつこい車買取CM、なぜ毎日のように流れるのか?
「またこのCMか…」
と感じるほど、テレビ、ラジオ等で頻繁に流れる自動車買取のCM。なぜ、特定の自動車買取業者はこれほど多額の広告費を投じて「聞き飽きる」ほどCMを流し続けるのでしょうか?
中古車買取業者の独特なビジネスモデルと為替の追い風、そしてCMに込められたマーケティング戦略を深掘りします。
1. 儲かるからしつこくCMを出せる、中古車買取ビジネスの特殊な収益構造
買取CMが多い最大の理由は、CMが仕入れコストであり、その後の利益で十分回収できる構造にあるから。
CMは「仕入れ競争」の最前線
中古車買取業にとって、車を買い取る(仕入れる)ことがすべての始まりです。とにかく買取しなければ何も始まりません。他社より多くの車を仕入れるため、CMを通じて以下の戦略を追求するのです。
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トップ・オブ・マインドの獲得: 「車を売ろうかな」と考えた瞬間に、CMの「車売るなら◯◯◯」のフレーズを思い浮かべる。一番最初に自社の名前を思い出してもらうため、圧倒的な頻度でCMを刷り込みます。これをトップ・オブ・マインド、あるいは第一想起と呼びます。買取業者として避けたいことは、査定額を他社と比較されることです。このトップ・オブ・マインド戦略の最も重要な目的の一つは、一括査定サイトや他の競合他社への流出を防ぎ、「最初の接触」を自社で独占することにあります。
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在庫回転率の向上: 車を頻繁に仕入れ、すぐに販売チャネル(オークション、自社販売、輸出)へ流すことで、在庫コストと劣化リスクを最小限に抑え、利益を積み上げます。たくさん買取してたくさん吐き出すことで利益を獲得するのです。
利益率が高い理由:輸出とマージン
買い取った車は国内販売だけに留まりません。個人から買い取った「仕入れ値」と、「市場での売却価格」の差(マージン)が大きく、特に以下のルートで高収益を確保しています。
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オートオークション経由での輸出: 国内最大手USSなどの業者間オークションを通じて、国内外のバイヤーに売却。
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独自の高利益ルート: 自社グループの輸出部門や特定のバイヤーへ直接卸し、オークション手数料や中間マージンをカットして利益を最大化する。
在庫劣化リスクの低下
中古車は一般的に在庫保有期間中に価値が目減りしていくリスク、「在庫劣化リスク」があります。しかし、最近の中古車相場高騰は、この在庫劣化リスクを劇的に下げています。一部の車種によっては逆転させている現象も。中古車相場は落ちにくい理由は主に新車納期遅延による代替需要増加、円安による輸出需要の安定です。
2. 重度の円安という決定的な追い風
買取CMが多い背景には、円安による中古車輸出市場の空前の活況があります。円安が進むと、海外のバイヤーは日本の中古車が割安になります。輸出業者は円安を武器に高く買い付けることができ、国内の買取相場全体が押し上げられます。買取業者は、高値で売れる車をたくさん仕入れたいので、CMという「仕入れへの投資」を惜しみなく行ってくるのです。
3. 企業が狙う「聞き飽きる」マーケティング戦略
CMがしつこいと感じるのは、企業が意図的にそう仕掛けているからです。
車買取業者がしつこいCMを流す理由は、消費者の頭の中で自社ブランドが占める割合を最大化することです。もう少し分かりやすく言うなら、「何かをする必要があるとき、反射的に一社の名前しか思い浮かばない状態を作り出すこと。」これを目指す戦略なのです。
「車を売るなら〇〇〇〇〇」というキャッチーなフレーズを何度も反復することで、視聴者の頭の中ではニーズとブランド名が直結する回路が出来上がります。
車の売却は低頻度のニーズ、一般的に数年に1回ぐらいじゃないでしょうか?そんな低頻度のニーズが発生した時、他社と比較検討されるまえに真っ先に自社を思い浮かべ問い合わせしてもらう状況を作り出すために、しつこくCMを流します。洗脳と近い、強力な心理的効果を狙ったCM戦略と言えますね。
4. 見過ごせない視聴者側(私たち)が負うコスト
この強力なCM戦略、企業に莫大な利益をもたらしますが、CMを浴びせられる視聴者にも負担が生じています。
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心理的負担: 頻度が高すぎると、視聴者は飽きたり鬱陶しく思い、イライラしたりしてネガティブな感情を抱き始めます。
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社会的負担(価格への転嫁): 高額なCM費用は、最終的に企業の経費となり、中古車の買取価格を下げたり、中古車販売価格を上げることになります。つまり高額なCM費用は最終的にサービスを利用する消費者が間接的に負担していることになります。
トップオブマインド戦略は消費者の選択肢を削ぐ行為とも言えますが、自由競争の枠内で完全に合法であり、一般的な商習慣として道徳的にも問題ないレベルのマーケティング手法。消費者は入ってくる情報だけに頼らず、自ら情報を集める努力も必要です。
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