格納式ドアハンドル、見た目重視だけじゃダメ? 中国が安全基準見直しへ
日本でいう経済産業省に相当する中国の国家機関、工業和信息化部は、最近流行りのアウタードアハンドルに対し、その安全基準について国家基準の策定と改訂計画を求めました。
まずはご存じない方もいらっしゃるかもしれないので、格納式のドアハンドルの映像を貼ります。
格納式ドアハンドルのメリットは?
格納式ドアハンドルのメリットをまとめてみました。
- 空力性能向上
ドアハンドルとドアパネルを一体化することによって、空気抵抗を減らし、わずかですが燃費・電費の向上に貢献。 - デザイン・近未来感の演出
無駄な凸が無くなること、物理的インターフェースを最小限に抑えることでスタイリッシュかつ近未来的な外観を演出。 - 静粛性の向上
突き出しているドアハンドルに比べ、風切り音が発生しにくくなるので、車室内の静粛性向上に貢献。 - 対人接触時の安全性
歩行者や自転車との接触事故があった場合、突出したドアハンドルより対人ダメージが減少。 - 盗難防止効果
ドアハンドルが格納されていることで物理的にドアを開けにくく、盗難防止の効果がある。
主にこんなところだと思いますが、自動車メーカーが格納ドアハンドルを採用する一番の理由はデザイン・近未来感の演出だと思います。
なぜなら、自動車メーカーにとって新型モデルに最新のデザインや、先進的イメージを打ち出すことは、欠かせないから。特に中国では。
消費者が同じ車格の競合他社製品と比べた際に
「最新モデルなのにまだ格納式ドアハンドルじゃないのか…」
という時代遅れ感を避けなければならないからです。
なぜ見直しが必要なのか
日本の自動車メーカーは安全性が確認できるまでは先進技術導入には慎重です。一方、BYD、NIO、Xpeng、Li Auto等、中国の自動車メーカーはかなり積極的に先進技術を採用しています。格納式ドアハンドルも例外ではありません。
工業和信息化部はこの格納式ドアハンドルが以下の理由で安全基準を見直す必要がある、と考えています。
- 緊急時の救助を困難にする
例えば事故で煙が出て炎上しそうな車両を発見。乗員を救出しようとしても、凝った演出(目立ちにくくする)によりドアハンドルがどこにあるか分かりにくい、開け方が分からないので救出が遅れる。またレスキュー隊がドアノブをワイヤーやロープで引っ張りドアを強引に開ける手法も使えない。ワイヤーをかけることが出来ても強度不足でドアが開けられない。 - バッテリー上がりで開閉困難
バッテリーが上がってしまった時に、ドアの開閉が困難になります。緊急時には別の開閉方法が用意されていても、普段使わない機能故いざという時に分からない。 - 挟み込みリスク
格納式ドアハンドルによる指の挟み込み事故が実際に報告されています。メーカーも挟み込み防止機能を搭載する等して対応していますが、髪の毛のようなセンサーが検知し難いものを挟んでしまうリスクが残っています。
攻める中国ならではの発想
中国の自動車メーカーにとって、慎重に安全を確認し検討する…なんて論外。急速な躍進を実現できたのは、先進技術をどんどん実戦投入して消費者に使ってもらい、市場の反応をみて問題があれば修正する実戦投入型のトライアンドエラー方式だから。技術革新のスピード重視なので、多少問題が発生することは想定内。問題が発生しても肩を落としたり、ため息をつく暇なんてありません。すぐ修正し即座に実戦投入します。ドアハンドルを見ても、この傾向が顕著に現れています。
ただし、安全性に関わる内容を、消費者を通じて実験するというのは、決して普通のことではありません。日本の自動車メーカーの安全性を重視する姿勢は、今後も大切にされるべきだと思いますが、多少のスピードや柔軟さは、今後の競争において必要になってくるのではないでしょうか?
好きな車と、暮らそう。
AUTORIESEN
サービス工場Blog
車検、点検、整備のあれこれを毎日更新!
熟練のメカニックの匠の技をご覧頂になれます。




