トルコ経由で欧州制圧を狙う、中国自動車メーカーの侵攻ルート

2025年4月19日

世界で最も自動車の生産台数が多い国は中国です。2位のアメリカより3倍近く多い数字です。日本は約900万台で3位です。

以下の表は2023年の四輪自動車生産台数(乗用車、小型商用車、トラック、バス)の国別ランキングと台数です。

順位 国名 生産台数(台)
1位 中国 30,160,966
2位 アメリカ合衆国 10,611,555
3位 日本 8,997,440
4位 インド 5,851,507
5位 韓国 4,243,597
6位 ドイツ 4,109,371
7位 メキシコ 4,002,047
8位 スペイン 2,451,221
9位 ブラジル 2,324,838
10位 タイ 1,841,663
11位 カナダ 1,553,026
12位 フランス 1,505,076
13位 トルコ 1,468,393
14位 チェコ 1,404,501
15位 インドネシア 1,395,717
16位 スロバキア 1,080,000
17位 イギリス 1,025,474

勿論この台数には、他国の自動車メーカーの生産分が含まれています。

今後、13位にいるトルコが10位位まで順位を上げる可能性があります。

トルコが順位を上げる理由

トルコの自動車生産台数が上がるであろう理由は、トルコが中国自動車メーカーの車両生産拠点になるからです。

BYDは既に去年の7月に工場建設計画を発表しています。

また、Chery(奇瑞汽車)も先月15億ドルを投資してトルコに工場建設を発表しました。

さらに、つい先日中国のSAICグループ傘下のMGがトルコに工場建設する、とニュースで報じられました。

車両だけではなく、EVやハイブリッド車に使用するバッテリー工場建設の発表もありました。

以前ブログでも取り上げましたが、トルコは中国から輸入されるすべての自動車に40%の追加関税をかけています。

中国自動車メーカーの工場建設は、国外へ輸出することが前提になっていますので、トルコとしても中国自動車メーカーの工場建設を歓迎しているのでしょう。

中国自動車メーカーがトルコを生産拠点にする目的は、欧州市場を狙っているからです。トルコ国内で生産された車両はEU圏の高い関税を回避できますし、欧州に近いロケーションの良さも大きなメリット。

トルコにとっても中国自動車メーカーの工場建設で雇用創出を期待できます。

中国自動車メーカーの欧州戦略

欧州の自動車メーカーは、補助金が打ち切られてから高額なEVの販売台数が急落。そこで、各欧州自動車メーカーはEV市場を活性化させるために今後低価格EVをどんどん開発・生産する予定です。しかし、低価格路線・価格競争は中国自動車メーカーが最も得意とする分野。欧州の自動車メーカーは中国メーカーを大きく上回る魅力的な車両を開発しなければ、今後確実にシェアを奪われます。

中国のメーカーは、利益よりもシェアを奪うことを優先する傾向にありますので、今後欧州の自動車メーカーはかなり消耗することになるでしょう。と言うか既に完全に消耗戦に入っていると言えます。

最終的にどうなるか?

恐らく今後欧州が中国の自動車メーカーの勢いを技術革新で封じ込めることは、かなり困難だと思います。そうなると残された手段は排他的戦略・保護主義的戦略を取るか、現実を受け入れるのどちらかしか有りません。

後者の”現実を受け入れる“は私の偏見かもしれませんが欧州が最も苦手とする分野。

かと言って保護主義に傾倒することは、短期的には国内産業を守る効果があるかもしれませんが、長期的には技術革新の遅れ、自国産業の競争力低下など、多くのデメリットを伴うリスクが高くなります。

さて、日本はアメリカの自動車関税のことばかり報じられています。日本の自動車業界の最大の脅威はアメリカの関税ではなく、お隣中国の自動車メーカーであることを忘れてはいけません。


好きな車と、暮らそう。

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