トルコ経由で欧州制圧を狙う、中国自動車メーカーの侵攻ルート
世界で最も自動車の生産台数が多い国は中国です。2位のアメリカより3倍近く多い数字です。日本は約900万台で3位です。
以下の表は2023年の四輪自動車生産台数(乗用車、小型商用車、トラック、バス)の国別ランキングと台数です。
順位 | 国名 | 生産台数(台) |
---|---|---|
1位 | 中国 | 30,160,966 |
2位 | アメリカ合衆国 | 10,611,555 |
3位 | 日本 | 8,997,440 |
4位 | インド | 5,851,507 |
5位 | 韓国 | 4,243,597 |
6位 | ドイツ | 4,109,371 |
7位 | メキシコ | 4,002,047 |
8位 | スペイン | 2,451,221 |
9位 | ブラジル | 2,324,838 |
10位 | タイ | 1,841,663 |
11位 | カナダ | 1,553,026 |
12位 | フランス | 1,505,076 |
13位 | トルコ | 1,468,393 |
14位 | チェコ | 1,404,501 |
15位 | インドネシア | 1,395,717 |
16位 | スロバキア | 1,080,000 |
17位 | イギリス | 1,025,474 |
勿論この台数には、他国の自動車メーカーの生産分が含まれています。
今後、13位にいるトルコが10位位まで順位を上げる可能性があります。
トルコが順位を上げる理由
トルコの自動車生産台数が上がるであろう理由は、トルコが中国自動車メーカーの車両生産拠点になるからです。
BYDは既に去年の7月に工場建設計画を発表しています。
また、Chery(奇瑞汽車)も先月15億ドルを投資してトルコに工場建設を発表しました。
さらに、つい先日中国のSAICグループ傘下のMGがトルコに工場建設する、とニュースで報じられました。
車両だけではなく、EVやハイブリッド車に使用するバッテリー工場建設の発表もありました。
以前ブログでも取り上げましたが、トルコは中国から輸入されるすべての自動車に40%の追加関税をかけています。
中国自動車メーカーの工場建設は、国外へ輸出することが前提になっていますので、トルコとしても中国自動車メーカーの工場建設を歓迎しているのでしょう。
中国自動車メーカーがトルコを生産拠点にする目的は、欧州市場を狙っているからです。トルコ国内で生産された車両はEU圏の高い関税を回避できますし、欧州に近いロケーションの良さも大きなメリット。
トルコにとっても中国自動車メーカーの工場建設で雇用創出を期待できます。
中国自動車メーカーの欧州戦略
欧州の自動車メーカーは、補助金が打ち切られてから高額なEVの販売台数が急落。そこで、各欧州自動車メーカーはEV市場を活性化させるために今後低価格EVをどんどん開発・生産する予定です。しかし、低価格路線・価格競争は中国自動車メーカーが最も得意とする分野。欧州の自動車メーカーは中国メーカーを大きく上回る魅力的な車両を開発しなければ、今後確実にシェアを奪われます。
中国のメーカーは、利益よりもシェアを奪うことを優先する傾向にありますので、今後欧州の自動車メーカーはかなり消耗することになるでしょう。と言うか既に完全に消耗戦に入っていると言えます。
最終的にどうなるか?
恐らく今後欧州が中国の自動車メーカーの勢いを技術革新で封じ込めることは、かなり困難だと思います。そうなると残された手段は排他的戦略・保護主義的戦略を取るか、現実を受け入れるのどちらかしか有りません。
後者の”現実を受け入れる“は私の偏見かもしれませんが欧州が最も苦手とする分野。
かと言って保護主義に傾倒することは、短期的には国内産業を守る効果があるかもしれませんが、長期的には技術革新の遅れ、自国産業の競争力低下など、多くのデメリットを伴うリスクが高くなります。
さて、日本はアメリカの自動車関税のことばかり報じられています。日本の自動車業界の最大の脅威はアメリカの関税ではなく、お隣中国の自動車メーカーであることを忘れてはいけません。
好きな車と、暮らそう。
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