日本生産車に27.5%の関税、でもGMやFORDはより高関税に?

2025年4月4日

アメリカの関税に関するニュースが大きな話題になっています。

日本で生産した自動車がアメリカに輸入される際には、もともとの関税2.5%に加え、25%の追加関税がプラスされ、合計27.5%の関税になります。

アメリカに生産工場を持っている外国企業は影響を受けにくいと言われていますが、実際に本当にそうなのかは生産過程を詳しく調べてみないと分かりません。例えばアメリカのトヨタ自動車の生産工場が、アメリカ国外から部品を調達していた場合、関税の影響を受けるからです。

27.5%の関税はかなり衝撃的な数字ですが、もしかしたらアメリカの自動車メーカーはそれ以上の関税の影響を受ける恐れがあります。

以下のyoutubeは、ウォール・ストリート・ジャーナルが2024年モデルのフォード F-150の部品構成を分析した映像です。
(この動画、再生回数もコメント数も凄いです)

F-150はミシガン州とミズーリ州で組み立てられていますが、ホイールはメキシコから、タイヤは韓国から、ハーフシャフトはカナダから…などなど。F-150はアメリカを除く24カ国の国から輸入された部品で組み立てられていると指摘しています。

以下は以前書いたブログにも載せていた画像ですが、部品は国境を跨ぐたびに関税が発生します。この時はメキシコとカナダに関する関税のことを書いていましたが、それ以外の国も対象になっていますので、今後はその影響はさらに広範囲になっています。

このF-150の1つの”ピストンロッド”ができるまでを追跡したところ、原材料のアルミニウムから最終的にエンジンに組み込まれるまで、アメリカ→カナダ→アメリカ→メキシコ→アメリカ→カナダ→アメリカと6回も国境を跨いでいることがわかりました。

そんなに行ったり来たりして何をしているの?と思うかもしれませんが、原料のアルミニウムを鋳造、粗加工、仕上げ、追加仕上げ、コネクティングロッドとリングの組み立て、エンジンへの組み込み等、複数の国で複数の工程を経て部品が完成するのです。この場合、報復関税がある場合は6回、ない場合でも3回関税が発生する機会があることになります。


ピストンロッドのイメージ

ピストンロッド1つでこれなので、1台の車両を構成する全ての部品に一体何回分の関税が上乗せされるのでしょうか?

となると、以下のような現象になるかも…

日本で生産した30,000ドルの自動車をアメリカで販売すると、27.5%の関税で38,250ドルになります(細かいコストは省く)。

同じ30,000ドルのアメリカ生産車は車両本体には関税はかかりませんが、部品価格が積み重なった関税で高額になり、結果完成車両の価格が38,250ドルを超える…、なんてことがあるかもしれません。

原材料から部品、組み立てまで100%アメリカで行えば関税は0%なので30,000ドルの車両は30,000ドルのままです。

しかし、NBC NEWSは

「全てアメリカ製部品で作られたアメリカ製の車は作り話だ」

と言及しています。

仮にALL Made in USAが実現しても、コストが高くなり効率も悪化するでしょうから、車両価格はさらに高額になると言われています。

今後世界の自動車メーカーがアメリカに生産工場を建設することによって、雇用を創出することにも期待しているようです。しかし、中国のBYDは、ロボットを導入することによって生産工場の無人化を進めていますので、必ずしも雇用が増えるとは限りません。

この関税、長い目で見ればサプライチェーンの国内回帰を促し、アメリカにとって良い結果になるのかもしれません。しかし、世界各国の優れた技術や部品を取り入れることで高性能な車両が完成します。そうなると、アメリカ車の競争力が低下して、世界で通用しなくなる可能性もあります。


好きな車と、暮らそう。

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