直販したいメーカーと、それを阻止したい自動車ディーラー

2025年3月10日

新車を購入する場合、今までは購入希望メーカーの自動車ディーラーに足を運び、販売担当者とグレードやオプション装備を話し合って決め、契約書を交わす。この手順が一般的でした。

しかし、テスラが自動車ディーラーを介さないメーカー直販を築き上げました。オンライン販売に重点を置き、店舗販売も直営のみ。自宅のリビングのソファーに座りながら車種やオプション装備を選んで購入手続きが完了するのです。

一般的に「正規ディーラー」と呼ばれている新車販売ディーラーは、メーカーと特約を結び、主に特定の地域でメーカーの看板を掲げ、車を販売する権利を持つ店舗のことを指します。メーカーから出資を受ける・受けないもありますが、基本的にディーラーはメーカーと独立した経営母体です。

ところが、テスラが短期間で今まで難しいと思われていた直販を成功させました。それを目の当たりにした他の自動車メーカーは

「自分たちも直販したい!」

と考えるようになったはずです。

実は既にその兆しは見え始めています。特定のモデルや、限定モデルをオンラインのみで販売するメーカーが増えています。

例えばボルボのEX30やEX40は、オンライン販売のみ。試乗はディーラーで可能ですが、試乗して気に入ったらオンラインで購入手続きを行います。点検や修理はディーラーにて行う流れになります。

恐らく今後は少しずつ直販モデルを増やしつつ、ディーラーの役割を再定義するのだと思います。

直販のメリットはメーカーだけではありません。購入者にとって、新車を購入すると言う面倒なイベントを簡素化できます。また、自分の値引は10万円だったのに、同じ車をSNSで40万円値引きで買った人がいる…、と言うような不公平もなくなります。(メーカー直販でもイベントやキャンペーン値引きはあると思います)

アメリカでは、直販しようとしているメーカーに対し、今まで自動車を販売してきたディーラーが

「それは無いんじゃない?」

とかなり怒っているようです。

ディーラーを飛び越えてメーカーに直販されたら車両販売の利益が無くなり、販売員の雇用が失われます。それなのに点検やメンテナンスだけやってくれって都合良すぎるでしょ、と考えるのは当然かもしれません。

アメリカの16,000以上の新車ディーラーが加盟しているNADA(全米自動車ディーラー協会)も、法的措置やロビー活動を通じて、メーカーの直接販売を阻止しようとしています。

アメリカは州によって、自動車メーカーが自社の車を直接顧客販売することを制限する”フランチャイズ法”が存在します。

しかし、テスラはフランチャイズ法によって直販が禁止されている州でも直販しています。なぜそれができるのでしょうか?その答えはテスラが法律の解釈や抜け穴を利用して、直接販売モデルを展開しているからです。

具体的な例を上げますと、州の多くの法律が免除される先住民居住区(ネイティブアメリカンの部族の土地)にテスラ直販店舗を建てました。先住民居住区は州ではなく連邦政府の主権下にあるため州法が適用されないので、直接販売禁止を回避しました。テスラには法律や規制に非常に詳しい人材がいる(あるいは法律事務所と顧問契約を結んでいる)ことが分かりますね。

今後いろんな自動車メーカーが直販にシフトするのだと思いますが、トヨタさんは違うようで…。


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