実はBYDよりも怖いのはチェリー(奇瑞汽車)?

2026年10月30日

「中国車なんてパクリデザインで品質が低く、よく燃える」

一昔前までは事実でいたが、それは過去の話。

中国の自動車メーカーの台頭は、日本や欧州の自動車メーカーにとって、もはや無視できない脅威となっています。

中国車と聞くと、EVやPHEVで世界を席巻するBYDを思い浮かべる方が多いと思います。しかし、実は本当に恐ろしいのはBYDではなくチェリー(Chery / 奇瑞汽車)かもしれません。

チェリー(奇瑞汽車)とは?

チェリー(奇瑞汽車)は1997年、安徽省蕪湖市で設立された中国国有系自動車メーカー。他社が中国国内市場でしのぎを削る中、チェリーはいち早く海外展開に着手してします。中国メーカーとしていち早く乗用車の本格輸出して、中国自動車輸出のパイオニアとしての地位を築いてきました。

現在、チェリーの勢いはさらに加速しています。 近年、欧州市場への攻勢を強めていて、自社ブランドのチェリーだけでに留まらず、若者向けのOmodaやJaecoo、さらには高級路線のLepasなど、複数のブランドを次々と投入。新型車やコンセプトカーを次々と発表し続けています。その成果は数字にも明確に表れていて、最近の欧州市場の販売台数は前年比187%増という驚異的な成長を記録。中国の乗用車の輸出トップを22年連続で維持していて、2025年には累計輸出が中国メーカー初の500万台を超えました。欧州の自動車業界にとってかなり恐ろしい存在になっています。

チェリーが日本や欧州メーカーの本当の脅威と言える理由

日本ではBYDほど名前を聞かないチェリー、しかしトヨタ、日産、VW、ステランティスなどの大衆車メーカーにとって、なぜチェリーが厄介な存在と言えるのでしょうか?

理由は主に4つあります。

  1. ガソリン車・ハイブリッド・EVの全方位戦略
    BYDは基本的にEVとPHEVに特化しています(一部水素の開発はしているようです)が、チェリーはガソリン車、ハイブリッド(HEV/PHEV)、EVまで、幅広いパワートレインを揃えています。EVのインフラが整っていない新興国で、既存メーカーの顧客を直接奪い取っているのです。

  2. 圧倒的な価格破壊力
    同等クラスの車両で比較すると、チェリーはBYDよりもさらに安価な価格設定をしてくるケースが多いです。さらに、低価格な純ガソリンSUVの豊富なラインナップを持っているので、大衆車層の市場下限を完全に削り取っています。

  3. ブランドのマルチ展開で市場を制圧」
    チェリーはターゲットごとに独立したブランドを立ち上げているので、コンパクトSUVから高級モデル、本格オフローダーまで幅広いユーザー層を網羅。あらゆる顧客層へ死角なくアプローチする戦術をとっています。

  4. 関税障壁を回避するスピード
    欧州などでは中国製自動車への保護主義的な関税強化が進んでいます。するとチェリーはすぐさまスペインなどの旧工場を活用した現地生産へシフト。海外販売の現地生産比率はすでに約半数に達していて、関税対策でも素早さで先手を取っています。

日本の自動車メーカーにとって脅威と言える理由は、新興国でシェアを伸ばしてきた日本車の牙城を侵食される点です。

実はBYDにとっても、チェリーは最も厄介な存在

先進国の既存の自動車メーカーだけでなく、実はEV王者のBYDにとっても、チェリーは油断できない強力なライバルと言えます。

BYDが先進的なEV・PHEVで世界に打って出ようとする際、中南米、中東、東南アジア、欧州などの海外主要市場には、すでにチェリーが築き上げた強固な販売網と顧客基盤が存在していました。

さらにBYDが得意とするPHEVでも、チェリーは航続距離の長い独自システムを低価格で投入しています。中国市場でも、チェリーの存在がBYDを激しい価格競争に巻き込んだと言っても良いと思います。

そんなチェリーが星ゼロ評価(0スター)を受ける

向かうところ敵なしに見えるチェリーですが、昨日気になるニュースが。

中南米の自動車の安全性能を評価するLatin NCAPのクラッシュテストで、チェリーの主力小型SUV「Tiggo 2」シリーズが、最低評価の星0(ゼロスター)を獲得してしまったのです。

試験結果では、正面衝突時の車体構造、足元エリアの不安定さ、ドライバーの胸部保護性能の低さに加え、子供の乗員保護で大きく評価を落としました。また、先進安全装備(ADAS)の欠如も評価を落とす要因となりました。安さと引き換えに、安全基準のアップデートが後手に回ったようです。

星ゼロ評価は限定的?それでも強敵であり続けるチェリー

今回の星ゼロ評価は、安全性やブランドイメージに敏感な先進国市場や一部のユーザーに対しては、ネガティブな影響を与えると思います。

しかし、これでチェリーの勢いが止まるかと問われれば、答えはNO。

チェリーは市場ごとに戦略を明確に打ち分けていて、先進国向けのOmoda 5やTiggo 4 Proは、オーストラリアのANCAPやEuro NCAPで最高評価の5つ星や4つ星を獲得しています。

今回0つ星を受けたのは、主に新興国市場。「低所得層でも買える」ことを優先にして開発されたエントリーモデルです。新興国ユーザーの多くが求めているのは、過酷な環境でも走れ、何より安く手が届く(買える)こと。

チェリーが日本や欧州メーカーにとって最も恐ろしい競合であるという現実は変わらないのではないでしょうか。近い将来、チェリーは日本に進出してくる思います。


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