ドイツが車不調、プレミアム路線の限界か?
最近の自動車業界のニュースを見ていると、長年世界の自動車市場を牽引してきたドイツ車メーカー(VW、メルセデス・ベンツ、BMWなど)の減益や不調が目立つようになってきました。
一方、欧州市場ではシトロエン、プジョー、フィアットなどを擁するステランティスやルノーが実用車カテゴリーを中心に健闘を見せています。ステランティスやルノーは、最近の燃料価格高騰の影響と、低価格化が実現できたことでEVの売れ行きも好調です。
なぜ、これまで圧倒的強さを誇ったドイツ車が苦戦し、相対的にステランティス勢やルノーが粘っているのでしょうか?
原因1:最大の稼ぎ頭「中国市場」での失速
ドイツ車不調の最も直接的な要因は、何と言ってもこれまで利益の大部分を叩き出していた中国市場での急減速。
中国市場では、BYDに代表される現地メーカーが急速に台頭。圧倒的な低価格・高機能を武器に市場シェアを伸ばしています。また、中国国内の景気不透明感の影響もあり、高いドイツ車を買うなら中国メーカーを選ぶ消費者が増えました。
中国への依存度が高かったメーカーほど、この直撃を重く受ける結果になっています。
一方で、もともと中国市場への依存度が低かったステランティスやルノーは、中国市場の減速による直接的なダメージを最小限に抑えられたという側面があります。
原因2:プレミアム路線(高価格化)の限界と市場構造の無視
もう一つの根深い原因があります。ドイツ勢が一斉にプレミアム路線(高価格・高付加価値)を目指したことです。
ここ数年、多くのメーカーが利益率を高めるため、高額なSUVやプレミアムEV、上級グレードへのシフトを強力に推し進めてきました。
300万円の車両に付加価値をつけて400万円で売る。
600万円の車両に付加価値をつけて800万円で売る。
もちろん、インフレや環境や安全対策による価格上昇も込になっていますが、より利益を追求するための付加価値や不必要な高スペックを盛って車両価格を高くする。これによって高利益を狙う戦略です。
しかし、これには構造的な無理があります。
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顧客ピラミッドの無視
自動車市場の購買層は、ピラミッド型をしています。頂点の富裕層のパイは限られていて、一番大きいのは手頃で実用的な車を求める中間層〜大衆層です。全メーカーが頂点を目指せば、限られたパイの奪い合いになり、市場は必ず飽和します。 -
一般ユーザーの置き去り
インフレやエネルギー高騰が続く中、車体価格や毎月のローン支払額が高騰。一般の消費者は住居費や水道光熱費、保険等の支払いも増えている中、高い新車は手が届かない状態になりました。ドイツ車ブランドが手頃なエントリーモデルを縮小・整理を進めたことで、足元の一般顧客を自ら手放す形になってしまったと言えます。
原因3:高価格化が招いたTCO(総所有コスト)高騰と中古車残価の落とし穴
車本体の値上げだけでなく、高度な電子装備やEV化に伴い、TCO(保険料や修理代、整備費といった維持費)も跳ね上がりました。
さらに、ハイテク満載のプレミアム車は、維持費や故障した際のリスクも非常に高く、中古車の値落ち(残価率低下)が顕著になり、残価設定ローンの月額支払いが跳ね上がる悪循環に陥っています。
新車が高い、維持費も高い、残価が下がる、となれば、消費者がより安価なブランドに乗り換えたり、型落ちに長く乗り続けるという選択をするのは当然の流れ。ドイツ車が手放したこのボリュームゾーンに、ステランティスやルノーの実用小型車、さらには中国メーカーが上手く滑り込んだと言えますね。
その他の原因
他にも、米国の関税、ソフトウェア開発の遅れ、早すぎるEV投資(しかも全力投球)欧州の高い人件費やエネルギーコスト等、悪いことがかなり重なった感じです。
高価格化の罠はステランティスにとっても他山の石
確かに今ステランティスは好調ですが、実は彼らも無傷ではありません。
ステランティスも北米市場でジープや大型ピックアップ等、強気の高価格化を進めた結果、在庫を抱え込み、大幅な減益や経営陣の刷新を余儀なくされた経緯があるからです。
つまり、欧州市場で小型実用車部門(シトロエンやフィアット等)が足元を支えていますが、過度な高価格化・利益率至上主義に走りすぎると、どのメーカーであっても顧客が離れていく恐れがあるという点では、ステランティスも全く同じ課題を突きつけられていると言えます。
過度な高価格化は劇薬
プレミアム路線は、当たれば台数が少なくても大きな利益を生む魅力的な戦略です。しかし、過度に進めれば一般消費者はついて行けなくなり、市場そのものを縮小させる劇薬でもあります。これはどの業界にも当てはまると思います。
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