EUの追加関税に抜け道あり?

2026年10月26日

最近の世界的な物価高やEVシフトが進む中、欧州の自動車市場で大きな歪が生まれています。

EUが自国の基幹産業を守るために打ち出した中国製EVへの追加関税が、巡り巡って「中国国内の激しい価格競争によって暴落した中古車が、欧州へ流入する」という思わぬ副作用を引き起こす恐れがあります。

1. 欧州の自動車価格高騰が消費者を直撃

現在、欧州の自動車市場では新車価格の急激な高騰が続いています。これは欧州だけではなくアメリカや日本も例外ではありません。日本には新車価格を抑える軽自動車という存在がありますが、アメリカや欧州にはそれがありません。

環境規制や安全基準の強化、各自動車メーカーが収益性を重視した大型SUVや高級EVに力を入れるようになった結果、今まで市民の足であった安価でコンパクトな大衆車が市場からどんどん姿を消してしまいました。

物価高やインフレ、家賃や水道光熱費高騰で生活が圧迫される中、欧州の消費者にとって新車購入のハードルがかなり高くなってしまいました。

2. 苦しむ消費者のニーズに合致した中国車

欧州の新車価格高騰は中国の自動車メーカーにとって好都合でした。手頃な価格と高い技術力を備えた中国ブランドのEVがどんどん欧州に販路を拡大します。

本来なら今まで乗ってきた欧州メーカーの車に乗りたかった消費者ですが、価格高騰によって考え方が変わりました。車は移動手段だと割り切る人や、コストパフォーマンスを最優先する欧州の一般ユーザーにとって、欧州車より大幅に低価格で購入できる中国製EVやPHEVは魅力的な選択肢となりました。

3. 基幹産業を守るべくEUが打ち出した「追加関税」

ところが危機感を強めたEU側は、自国の基幹産業である自動車メーカーや雇用を守るため、2024年に中国製BEV(バッテリー電気自動車)に対して最大45.3%(10%の関税に最大35.3%を上乗せ)という高率の追加関税を発動しました。

さらに今月、関税を回避しようと中国メーカーがEVからPHEV(プラグインハイブリッド)などの輸出へと一斉に切り替えたことを受け、EUは中国製ハイブリッド車の輸入に対しても年間35万台という上限キャップを新たに導入が決まりました。このセーフガードは12月に発動されると発表されています。

EUは、安い中国車の大量流入に対し、関税の壁を築いてEUの自動車メーカーを守り、市場を沈静化させようと試みました。

4. 関税に実際に苦しんだのは欧州の消費者だった?

しかし、この高率関税によって真っ先に打撃を受けたのは、欧州の消費者だったかもしれません。

安くて手の届く中国製新車にも高い関税が上乗せされて価格が跳ね上がり、新車を購入するという選択肢が狭くなる状態を作り出してしまったのです。家賃、水道光熱費、保険はどんどん増すばかり。

5. 抜け道となる、大幅下落した中国の中古EV

ここで注目したいのは、貿易規制の盲点を突く思わぬシフト。

中国国内の自動車市場では、メーカー同士の熾烈な価格戦争と極めて短いモデルサイクル、そして過剰供給によって、走行距離わずか数千kmといった新古車同様の中古車が、元の定価の40%引きといった投げ売り価格で出回っています。大量に抱えた未使用車も中古車として市場に流さざるを得ない4Sショップ(中国の自動車ディーラー)も存在します。

そして盲点となる重要ポイントは、追加関税や輸入制限枠は“新車”が対象であり、“中古車(並行輸入)”には適用されないという点。

  • 欧州の新車EV
    関税で高騰・高止まり

  • 中国からの低走行中古EV
    関税の対象外 + 中国国内のデフレで暴落した超格安価格

この構図によって、高価格に苦しむ欧州の消費者が、関税の壁を飛び越えて流れてくるデフレ価格の中古中国車へと需要が向かう恐れがあります。

ここで1つ問題があります。中国で乗られていた中古車はそのままではEU域内の公道を走行することはできません。しかし、ホモロゲーション手続(認証手続き)を行えば乗ることができます。その価格は安くありません、日本円で60万円~70万円位かかると言われています。それでも価格が大幅下落した中古中国車なら安く買える場合があります。この認証手続コストは、台数が増えると薄利多売の原理で、1台あたりのコストはどんどん安くなると思います。

欧州で「お値打ちに買える中古車」と言う需要が増えれば、中古中古車EVを求める人が増えるかもしれません。ただし、故障の頻度や故障したら直せるか?と言う問題がありますね。

故障等のリスクが未知数であることもリセールバリューが悪い理由の一つと考えると、なかなか手を出し難いと思います。