自動車メーカーが巨大液晶画面+タッチパネルを採用したがる理由
最近の乗用車は、運転席の目の前に巨大な液晶画面が鎮座している光景が当たり前になってきました。
ナビだけではなく、エアコンの温度調整から走行モードの切替まで、すべてタッチパネルで操作する車が増えています。
その一方で、タッチパネルの操作は物理ボタンよりもドライバーの集中力を散漫にする問題もあり、一部で物理ボタン回帰が起こり始めています。
しかし、それでもなお、車業界全体としては「物理ボタンを最小限にして、タッチパネルをメインにする」という大きな流れは変わっていません。
物理ボタン回帰の裏で、なぜタッチパネル化は止まらない?
「エアコンの風量を変えたいだけなのに、画面のメニューを何回もタップしなければならない。」
「走行中にブラインドタッチ(手探り)で操作できないから危険だ。」
こうした問題を受け、欧州の安全規格などでも「重要機能操作は物理ボタンを残すべきだ」という評価基準が導入されるなど、物理ボタン回帰も始まっています。
しかし、メーカー側がボタンを復活させるとしても、それはウインカーやハザード、エアコンの温度ダイヤルといった最低限の機能にとどまっています。
多くの操作を画面の中に閉じ込めるスタイル自体は、今後もメインであり続けると思われます。
メーカーがこのスタイルを押し進める理由は、コスト削減とソフトウェア化です。ソフトウェア化についてはまた別の機会のブログネタにするとして、今回はコスト削減にフォーカスしてみます。
一見高そうな巨大画面が実は一番安い
車に物理的なボタンやスイッチを1つ付けるのは、私たちが想像する以上に費用がかかります。
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部品代と金型代
スイッチ本体、バネ、接点、カバーなど多くのパーツが必要。 -
配線の手間
インパネ(ダッシュボード内部)の裏側に、ボタン1つひとつに繋がる何本もの電線を通さなければならない。 -
工場の組み立てコスト
1つずつインパネに組み込む工程が発生する。
ボタンが数十個あれば、それだけ部品が増え、配線が複雑になり、工場の組み立て時間も伸びてコストが跳ね上がります。
「大きな画面1枚」なら、プログラムを増やすだけで済む
一方、巨大液晶画面をポンと1枚設置した場合はどうでしょうか。
ハードウェアとして必要な物理的なパーツを大幅に減らし、操作の多くを画面に集約できます。あとは「ソフトウェアの画面(UI)」上で、エアコンのボタンや設定メニューを追加・変更できるのです。
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物理的なパーツが大幅に減る
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工場での組み立て工程が短縮される
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世界共通の画面デザインを使えば、国ごとの製造コストも抑えられる
「未来っぽくて豪華に見えるデザイン」というユーザー体験をアピールしながら、裏では製造コストをガッツリ削ることができるのです。
コストを削った結果、トラブル・不具合が多発
しかし、このタッチパネル主体の車づくりには大きな代償が伴っています。
インフォテイメントシステムが車の品質を低下させている、というTHE DRIVEの記事。
自動車の調査機関J.D.パワーが発表した2026年マルチメディア品質・満足度調査データによると、新車で発生する不具合・トラブルのなんと25%(4分の1)が、画面やナビなどの車載インフォテインメントシステムによるものだと報告されています。
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スマホとのBluetooth接続が切れる
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画面が突然フリーズしてエアコンの操作すらできなくなる
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画面操作に気を取られて車から脇見運転警告が出される
エンジンや足回りのようなメカニカルな品質は年々向上していますが、IT・ソフトウェア領域の不具合が新車の品質評価を引き下げてしまっているのが現状。
デジタルメーターも全く同じ構造
針が動くアナログメーターからスピードメーターへ移行されたのも、大幅なコストダウンを実現できるというメーカー側の大きなメリットがあります。
アナログメーターは、小さなモーター(ステッピングモーター)、ギア、物理的な針、盤面パネル、文字盤を照らすLEDなど、精密部品の集合体でした。 これをガラス基板と液晶パネル1枚に置き換えるだけで、物理パーツの点数が劇的に減り、部品調達や管理のコストが下がります。
また、世界中で販売する車の場合、従来は国や地域(km/h表示か mph表示かなど)に合わせてメーターの文字盤を物理的に貼り分ける必要がありました。デジタルなら輸出先の設定をソフトウェアで切り替えるだけで完了します。
いずれWin-Winになる?
現状のインフォテインメントシステムが引き起こしている不具合の多さや、脇見運転のリスクを見る限り、まだその理想にはほど遠いと言えます。しかし、自動車メーカー側にコスト削減という思惑があること自体は、消費者にとって必ずしも無関係な話ではないと思います。操作のしやすさや視認性の向上、そしてソフトウェアアップデートによるUI改善や最新機能へのアップグレードのようなメリットが伴えば、立派なユーザー体験の向上につながるはず。メーカーのコスト削減と消費者の利便性向上、これが両立して初めて、タッチパネル化は本当の意味でのWin-Winと言えるのだと思います。
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