猛暑のフランスで車約50台が立ち往生。 謎の大量故障の原因は?

2025年8月18日

天気予報によりますと、今日の最高気温は39度。まだしばらくこの高温の日が続きそうです。

近年39度と言う高温は珍しくなくなりましたが、今年は6月中旬から猛暑日が始まっています。その関係か、車の故障や天張り(ルーフの内張り)が剥がれ落ちてしまうトラブルがとても多いです。

暑いのは日本だけではありません。欧州も熱波の影響を受けていて、スペイン、ポルトガル、フランス、ギリシャ等、各地で山火事が発生しています。

フランスではエアコン未設置の住宅も多い上に、室外機が景観への配慮や条例から安易にエアコンを設置できない事情があるそうです。それでいて40度近い気温になっているので、欧州の人たちもうんざりしていることでしょう。


冒頭でも車の故障や天張り剥がれが多いと記述した通り、この酷暑は自動車にとってもかなり大きな負担になっています。

熱波に襲われているフランスでは、こんなトラブルが発生しました。フランス南部、エロー県のA75高速道路のエスカレット峠付近で、渋滞が発生したことを発端に大きな混乱が発生したのです。

高速道路の渋滞だけなら大きなニュースにもならないのですが、この渋滞で50台位の車が故障して道路脇で立ち往生しました。


何が壊れたか?

今回の故障した数十台の車は、ほぼ全てがオーバーヒートでした。エンジンのオーバーヒートした車両の中にはガスケット損傷してしまった重症車両もあったそうです。レッカー会社の情報によると、特に多かったのクラッチのオーバーヒートでした。


故障の原因は?

同時にこれほどの台数の車が故障してしまった原因は何でしょうか?

大規模故障が発生した当初、道路脇に立ち往生している多数の車をティックトッカーが撮影し、TikTokに投稿。

その時は、エスカレット峠手前のガスステーションで給油した燃料に何らかの問題があったに違いない、と言う噂が拡散されました。しかし、レッカー会社が故障車両の大半がクラッチのオーバーヒートであることを発表し、「ガソリンスタンドのせい」という説は否定されました。

そこでわかった主な原因は、

  1. 第一の原因:トンネルの電源トラブル
    大規模故障が発生したエスカレット峠付近のレスカレットトンネルで、主電源の故障が発生。この故障が一連のトラブルの始まりです。
  2. 第二の原因:渋滞
    レスカレットトンネルの主電源故障により、安全上の理由から車線規制が行われました。この車線規制のせいで約50分間渋滞が発生。
  3. 第三の原因:坂道での不適切なシフト操作
    恐らくクラッチ異常の大半がセミAT*車だったと思われます。
    * “セミAT(半自動変速機)は、トルクコンバーターを介さずに、MTのクラッチとギアをコンピューターが自動で操作するシステム”
    故障車が多発したのはエスカレット峠の7%の急勾配。ノロノロ運転での上り坂でセミAT車が1速と2速の変速を頻繁に繰り返したり、1速で走るべき低速走行の上り坂で長時間2速を使用したことでクラッチに大きな負担がかかりました。このような低速上り坂では、1速ホールドで走行をすることで故障を回避できた可能性が高いです。スピードに乗る前の坂道での2速は車に負担がかかります。自転車でも急な上り坂や走り出しの時に3速や4速を使うと、人や自転車に高い負荷がかかります。
  4. 第四の原因:熱波による40度近い高温
    不適切なシフト操作に加え、その日の気温が40度近い高温だったことが、クラッチやエンジンがオーバーヒートしやすい条件を作りました。

一応補足しておきますが、セミATだけではなく、普通のAT車も熱ダレで不具合が発生していた可能性もあります。エンジンのオーバーヒートに関しては、旧年式車で冷却能力の低下していたり、冷却水不足等の整備不良があった可能性もあります。

今回の大規模故障の映像がSNSで拡散されると

「内燃機関車ばかりでEVはぜんぜん壊れてないね」

という意見も出ています。EVにはクラッチ機構が存在しませんし、オーバーヒートも起こり難いので、今回のような条件では内燃機関車は不利だと言えるでしょう。


20年近く前の話になりますが、弊社ではトヨタのAYGOやプジョー107、シトロエンC1を輸入・販売していました。このAYGOや107、C1が何故かショッピングモールの立体駐車場で動けなくなってしまうトラブルが多発。その時はなぜショッピングモールの駐車場でトラブルが多発するのか不思議でした。複数の症状を確認したところ、立体駐車場の急勾配をATモードで登る際に高負荷がかかり、一時的にロックされていたことが原因だと分かりました。この場合しばらく放置してクールダウンさせると復活して走れるようになりました。以降、シフトのホールド機能を使うよう説明してからはこのトラブルは無くなりました。

最近のセミAT車はかなり賢くなっているので、より適切に変速してくれるようになりました。それでも、低速で急勾配を走行する際には、シフトのホールド機能を活用して車に負担をかけないようにしてあげることで、故障のリスクを低減させることができます。


最後に、セミAT車(特にDTCやDSGのようなダブルクラッチの車)は、加速する時にノロノロと走り出すよりも、ある程度テンポよく加速した方がクラッチの負担は少ないです。例えば信号が青になってゆっくり加速を続けると、アクチュエータがクラッチをじわじわ繋げたまま制御しますが、テンポ良く加速させるとクラッチが短時間で「ガチッ」とつながります。運転のクセで車の寿命が変わる典型的な例だと思います。


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