貨物船、スエズ運河ルートを避けるのは結構大変だ

2024年2月11日

去年の11月19日、日本郵船が運行・管理していた自動車輸送船のギャラクシーリーダーが武装組織のフーシ派に襲われました。

かなりややこしい話になりますが…

  • ギャラクシーリーダーの所有者は登記上ではギャラクシー・マリタイム社
  • ギャラクシー・マリタイム社の登記はマン島
  • マン島はイギリス(厳密に言うとイギリス王室属領)
  • ギャラクシー・マリタイム社の親会社がゾディアック・マリティム社(イスラエル)
  • ゾディアック・マリティム社の子会社、レイ・カーキャリアーズ社(イスラエル)ギャラクシーリーダーの船主

イスラエルのレイ・カーキャリアーズ社海運一家であるウンガー家が創業した会社です。つまり、ギャラクシーリーダーウンガー家 が実質的な船主ってことになります。

船舶の所有者がこんな複雑になっている理由の1つはは、船舶は超極額な資産なので共同所有にすることが多いそうです。飛行機もそうですよね。

また、所有者を複雑にすることによって、政治的なトラブルや特定の国からの制裁回避策にもなるそうですが、ギャラクシーリーダーはフーシ派に襲われてしまったので、その効果は???です。

ここまでが今日のブログの前置きになります。

「ギャラクシーリーダーの所有が誰なのか?」

これだけで今日のブログのネタにすればよかったかも…

さて、このフーシ派が貨物船を攻撃する恐れがあるせいで、スエズ運河を経由して航行するような多くの貨物船が、南アフリカの喜望峰へ迂回するルート変更を余儀なくされています。

欧州で購入した車を日本まで運ぶ場合も例外ではなく、遠回りになる喜望峰ルートを航行する関係で輸送費用も上がってしまいます。

下のマップはグレーの部分が陸地、白が海、赤色がタンカー、緑色が貨物船です。かなり多くの船が南アフリカ経由で航行していることが分かりますね。

この状況でも紅海・アデン湾を通過する船がいますが、フーシ派の攻撃対象は個々の船舶の状況によって異なります。イスラエルと関係があると判断されてしまうと、狙われるのでしょう。具体的にどれくらい関係していると襲われるのかが分からないので、少しでも怖いと思ったら喜望峰経由を通ることになると思います。

喜望峰経由はスエズ運河を通りませんが、スエズ運河を通らないと言うことは、エジプトに高額なスエズ運河通航料(数千万円)を支払う必要は無くなります。だったら、喜望峰経由の方が輸送費用が安くなるんじゃないの?と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

4,000海里程(約7,400km)航行距離が増えるので、その分多くの燃料が必要になります。大型船の燃料消費量は1日100~200トン。喜望峰経由はスエズ運河経由より1,400トン~2,800トン余分に燃料が必要になります。また、喜望峰ルートは2週間位余分にかかるので、保険料も上がりますし、船員にかかるコストも増えるでしょう。そして、喜望峰付近の海は荒れ易く海難事故が多いエリア。できれば通りたくないルートでもあるのです。

これじゃ輸送コストが上がって困るな~、と思う人もいるでしょうが、今回の一番の被害者はたぶんエジプトですね。

エジプトにとってスエズ運河の通航料減収はかなり大きな痛手となるはずです。

早く平和が訪れますように人

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