中国製PHEVにEUが後出しルール?太陽光パネルの二の舞を避けたい事情

2026年10月8日

スポーツやゲームで、試合の途中に「その技は禁止!」とルールを変えれば、批判を受けるのは当然でしょう。

いま自動車の国際貿易で、それに近いことが起ころうとしています。

契約や法の支配を重んじてきたEUが、急速に販売を伸ばす中国製ハイブリッド車(HV)への規制を検討しているのです。もちろん、関税の仕組みの隙間を突くように販売を伸ばした中国メーカー側にも言い分はあり、見方は分かれます。

なぜEUはルールを変えざるを得ない状況に追い込まれたのか、背景を整理します。

関税を回避する形で、中国製PHEVが急増

発端は2024年10月。EUは、安価な中国製の電気自動車(BEV)の流入を抑えるため、最大45.3%の追加関税を課しました。

これに対し中国メーカーは、通常の関税率10%が適用されるハイブリッド車、特にプラグインハイブリッド車(PHEV)へ軸足を移しました。BYDをはじめとする中国メーカー各社が、欧州メーカーならオプション扱いの装備を標準装備に組み込み、それでいて低価格で品質の高いPHEVを欧州にどんどん投入。その結果、中国製PHEVの輸入量は次のように推移しています。

  • 2024年10月:月間約3,800台
  • 2026年7月:月間約50,000台(約13倍)

現在は、欧州で売れるPHEVの約3台に1台が中国車になっています。

EUが警戒する理由、雇用と「太陽光パネルの前例」

EUの自動車産業は、約1,300万人の雇用を支える基幹産業です。欧州ではEVシフトに伴い、充電インフラの不足や車両価格の高さが課題になり、消費者がハイブリッド車を選び直す動きも出ています。欧州メーカーがその変化への対応に遅れる間に、中国メーカーがハイブリッド車の市場を広げた形です。

EUの念頭にあるのは、太陽光パネル産業の前例だとみられます。欧州はかつてこの分野をリードしていましたが、中国勢との価格競争に敗れ、産業の大半を失いました。同じ事態を自動車で繰り返したくないという危機感が、今回の対応を後押ししたと思われます。

「自主規制」の要請が持つ意味

EUは中国側に対し、欧州市場でのシェアを15%程度に抑えるよう自主的な対応を打診したと報じられています。これは「自主的輸出規制(VER)」と呼ばれるもので、表向きはお願いベース(話し合いによる解決)です。しかし、実質的には、応じなければ関税割当やセーフガードなどの措置を取りうるという強い圧力を伴います。EUが一方的に関税を引き上げたり輸入を制限したりすれば、WTOの紛争解決で不利になる可能性があります。中国が自主的に輸出を減らす形であれば、EUはそのリスクを避けつつ自国産業を守れます。

日本が経験した1980年代との類似

こうした構図は、過去にも見られました。その相手は日本です。1970〜80年代に日本車が欧米市場で急速にシェアを伸ばした際、日本は貿易摩擦を避けるために自主規制を受け入れ、その後、現地生産へと軸足を移していきました。

しかし今回の件、中国政府はEUの要請を「WTOルール違反だ」として拒否しています。交渉が決裂したことで、EUはセーフガードや関税割当といった、より強制力のある手段の検討を進める段階に入っています。

中国が強気に出られる理由

中国が以前の日本のように自主規制を受け入れなかった理由、中国側に強力なカードがあるからでしょう。

中国はEV用バッテリーの世界最大手(CATLやBYDなど)を抱えていて、車載電池の世界シェアの大半を握っています。さらに、バッテリー製造に不可欠なレアアースの製錬・加工シェアは圧倒的。中国としては「やれるものならやってみろ」という姿勢に見えます。

EUの自動車メーカー自身も中国製バッテリーや原料なしには車を作れません。欧州の自動車メーカー(特にドイツ)にとって、中国の報復カードは痛いはず。中国はEUも一枚岩でないことを知っているので、現時点では中国が有利な立場にあると言えます。

EUがルールの変更まで視野に入れていることは、通常の市場競争だけでは欧州メーカーが中国メーカーの攻勢に耐えられなくなっていることの表れともいえます。EUは自動車産業が太陽光パネルと同じ道をたどれば基幹産業の壊滅につながる、という強い危機感があるのでしょう。

日本は他人事でいられるか

日本における中国車のシェアは、いまのところかなり小さいままです。日本人が持つ中国車のイメージ、認証問題や販売・整備網等の壁が大きいのだと思います。それでも一昔前まで中国車が日本で販売されるとは考えもしなかったところに、BYDが日本独自の軽規格車まで販売する時代になりました。

中国車参入の壁が低くなり、もしEUと同じ状況に陥った場合、日本はどのような対応をするのでしょうか。


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