フランスのバカンスに異変? 猛暑と物価高が生む「移動格差」

2026年10月5日

フランスは夏に1ヶ月近い休み(バカンス)があり、それを利用した長距離旅行に行く人が多い国です。

フランス人にとって、夏のバカンスは単なる休暇ではありません。仕事や日常のストレスから解放され、家族や友人と過ごす一大イベント。しかし、今年の夏のバカンスには、これまでの「当たり前」とは少し違う、変化の兆しが見られました。

今年のバカンスに起きた変化

これまでのフランスのバカンスといえば、車に荷物を満載にして、何百キロも長距離ドライブをする、というのが定番のスタイルでした。

ところが今年の夏は、遠出を避け、自宅から近い国内エリアで過ごす人、旅行の滞在日数を短縮する家庭が多かったようです。

「遠くへ、長く」行くバカンスから、「近くで、コンパクトに」過ごす安・近・短なバカンスへと、人々の行動パターンがシフトし始めているのです。

長距離移動を避けるようになった2つの理由

この変化の裏には、主に猛暑と経済的要因という2つの問題が重なっています。

1. 深刻化する気候変動(猛暑)

近年、ヨーロッパを襲う夏の猛暑(熱波)は年々厳しさを増しています。憧れだった南仏のビーチも、連日の40℃超えで暑すぎて外に出られない状態に。 そのため、涼しさを求めてノルマンディーやブルターニュといった北部沿岸や、標高の高い山岳地帯を選ぶ「避暑型バカンス」へシフトする人が増えています。

2. 暮らしを直撃する経済的要因(物価高)

より深刻なのがお金の問題。燃料代高騰や高速道路料金の値上がりにより、車での長距離移動そのものが家計の大きな負担になっています。さらに現地(旅先)での宿泊費や食費も上がっているため、移動費を削らなければバカンスそのものに行けないという厳しい現実に直面しているのです。

車はもう贅沢品、3人に1人が車を手放すことを検討?

移動費を抑える努力も限界に達しつつあるフランスでは、ある調査結果が報じられ、注目を集めています。

保険会社Leocareが2026年9月に実施した調査(18歳以上の1,000人が対象)によると、37%の人が「今後1年以内に自分の車を手放すことを検討している」と答えました。内訳は、「かなりの確率で考えている」が10%、「可能性として考えている」が27%です。一方、「何があっても手放さない」という人は47%でした。

高騰する保険料、上がり続ける維持費。自動車を所有しているだけで家計を圧迫する贅沢品になりつつあります。

中には

「車の維持費を捻出するために食費を削っている」
「警告灯が点灯していても修理代が高額なのでそのまま乗り続けている」

という声もあり、限界を迎えた人々が苦肉の決断として「車を手放す」という選択肢を考え始めているのです。

Youtubeの映像は、燃料価格が高騰してフランス人の3分の1が不要不急の移動を控えるようになった、と報じている映像。

現在フランスでは、5世帯に1世帯が年間の燃料代に給料1か月分以上を費やしているそうです。

浮き彫りになる移動格差

ここで考えさせられるのが、フランス国内で急速に広がる移動格差。

フランスの貧困層や若年層は

  • 生きていく上で最低限必要とされる食費・医療費
  • 自動車

のどちらか一方しか選べない状況なのです。

「この選択肢しか無いのであれば、食費・医療費を選ぶに決まってる!」

と思うかもしれません。パリなどの大都市であれば、公共交通機関が発達しているため、日常生活にも大きな影響はないでしょう。

しかし、地方や郊外、農村部に住む人々にとっては、車=生活の足です。仕事や買い物、病院に行くにも車は必須。車を手放したくても代替手段がないため、膨れ上がる維持費を無理して払い続けるしかありません。だからといってパリに移住したくても家賃が高騰していますし、賃貸物件を借りるには厳しい審査もあるのでとても難しいです。

この移動格差、住まいの格差とセットになっているのでより解決が難しいと言われています。と言うか、生まれ育った場所がそのまま「移動格差」にスライドすると言っても過言ではありません。都会に生まれ、そこで育って就職できた人。地方に生まれ、移動格差と住まいの格差の負の部分をダブルパンチで受けてしまった人。この差はとても大きいと思います。

日本でも物価高や猛暑が続いていますが、私たちの移動の未来にとっても、決して他人事ではないのかもしれません。


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