成長市場インドで起きている「1.7兆円の在庫滞留」
いま、成長著しいインドの自動車部品業界で「98,000クロールピー(約1.7兆円)もの在庫が現場に眠っている」というレポートが話題になっています。
適切な在庫管理を行えば、最大で約6,800億円の資金(キャッシュ)を浮かせられると指摘されています。
では、なぜインドのこれほどの過剰在庫が発生してしまうのでしょうか?
自動車業界におけるサプライチェーンの「Tier(ピラミッド構造)」の仕組みと、日本のカンバン方式との違いを整理してみました。
1. 自動車業界の「Tier(ピラミッド構造)」とは?
自動車は1台あたり約2〜3万個の部品で構成されていると言われています。完成車メーカーがすべての部品工場と直接やり取りすることは不可能なため、基本的に業界はピラミッド型に分業されています。
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OEM(完成車メーカー): トヨタ、ホンダなど
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Tier 1(1次請け): デンソーなど(OEMに直接納入する大型メーカー)
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Tier 2(2次請け): プレス品や基板などの加工品をTier 1へ納入
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Tier 3以下(3次請け〜): ネジやゴム、メッキなどの加工を担う中小企業
ピラミッドの末端(Tier 2/3)に行くほど企業の規模は小さくなり、情報共有の遅れや資金繰りの問題が発生しやすくなります。
2. なぜインドで巨額の過剰在庫が生まれるのか?
主な理由は次の3つと言われています
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欠品を恐れた「抱え込み」(ブルウィップ効果)
末端のサプライヤーほど「納入遅れでペナルティを受けるリスク」を恐れるものです。「欠品を防ぎたい」という気持ちが働き、少しずつ多めに発注を行うため在庫を多めに抱え込んでしまいます。 -
現場の生産効率の低さ
インドは設備不足と言われつつも、実際の工場平均稼働率は約75%〜85%程度と言われています。プレス機や成形機の型替え(段取り替え)に時間がかかる現場では、一度にドカンと作ってしまうこともあるのでしょう。また、上からのプレッシャーで、設備の稼働率を上げることが目的になり、無駄に生産数を増やしている可能性もあります。 -
「まとめて作った方が得」という勘違い
1回のセットアップで大量に作った方が製造単価が安くなるため、使わない部品まで大量に作り置きしてしまう悪しき習慣。しかし、製造単価を負うも保管するコストを見落としてしまいがち。
インドの自動車製造現場では、設備を増やして生産能力を増強するのではなく、すでに所有している設備・資産を効率的に活用することが重要。眠っている在庫から解放されることで、次世代技術への投資等、好循環が生まれると言われています。
3. 日本はどう最適化してきたか?
日本の自動車産業もかつては同じ課題を抱えていましたが、皆さんご存知のカンバン方式(ジャストインタイム)でそれを克服してきました。
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後工程引き取り
下請け企業は「上が使った分だけ」を補充する。 -
小ロット生産
設備の段取り替え時間を最小限にし、大量な作り置きをなくす。
このジャストインタイム生産は、災害や地政学リスクのたびに「カンバン方式は弱い」と批判されることがありますが、では、どれだけ部品の在庫を持っていれば解決するのでしょうか。例えば、ある重要な半導体の供給が完全に止まったとします。1か月分の在庫があれば、生産停止を1か月遅らせることはできます。しかし、1か月後までに供給が復旧しなければ、結局止まります。
ジャストインタイム生産の本質は単なる「在庫ゼロ」を目指しているのではありません。資源や資金の無駄を極限まで省き、無駄を徹底的に可視化して排除するという思想です。確かに欠点もありますが、持続可能なモノづくりの最適解であることに変わりはありません。部品の供給が止まるようなことがあった場合。在庫で解決するのではなく、別の方法で立ち直れる能力を持つことの方が重要です。
4. 日印の決定的な違いと今後の展望
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日本
すでに在庫は極限まで削減済み。無駄の削減と、有事に備える柔軟性のバランスが課題。 -
インド
管理手法を変えるだけで巨額の現金(在庫)が浮くフェーズ。
インドの部品メーカーがこの「眠っている1.7兆円」を回収し、EVや電子制御などの次世代投資へ回し始めたとき、グローバル市場での強力なライバルへと進化する可能性があります。インドにはまだ大きな伸びしろがあると言えます。
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