「EVが売れなすぎて、ガソリン車を無理やり作り直す」という大バタバタ劇
フィアット(ステランティスグループ)が引き起こしたこの「500e(チンクエチェントe)のガソリン車逆移植ドタバタ劇」は、自動車業界の歴史に残るレベルの「方向転換」として欧州で大きな話題になっています。
自動車の設計思想を知れば知るほど、メーカー側がどれだけ追い詰められ無茶な突撃工事を行ったかがよく分かります。
■事の経緯
高価なEV専用プラットフォームで大コケ・・・。
1.「これからは完全EVの時代だ!」と見切り発車
2020年、フィアットは3代目となる現行500を「EV専売モデル(500e)」として発表しました。
ガソリン車時代の旧型プラットフォームを一切捨て、巨額の投資をしてEV専用のまったく新しいシャシーを起こしたのです。
2.欧州でのEV需要が急速に冷え込む
補助金のカット、電気代の高騰、そして何より「小さくて安いのが売りだった500なのに、EV化で300万〜400万円オーバーと高くなりすぎた」ことが響き、売れ行きが激減。
3.工場がストップ&労組が大激怒
イタリア・トリノにある伝統のミラフィオーリ工場は500eの専用工場でしたが、車が売れないため何度もラインを長期間停止せざるを得なくなりました。
地元の労働組合やイタリア政府から「雇用はどうするんだ!」と猛バッシングを受ける羽目に陥ります。
■何がそんなに「無茶(バタバタ)」だったのか?
普通、自動車の開発は「ガソリン車ベースにバッテリーを積む(ICE → BEV)」のが一般的です。
しかし今回は「EV用に作った車体に、あとからガソリンエンジンとミッションを強引に詰め込む(BEV → ICE)」という、業界でも前代未聞のレトロフィットを辿ることになりました。
■技術的なドタバタポイント
・エンジンスペースがそもそも考慮されていない
EV専用シャシーとして設計したため、エンジンやトランスミッション、吸排気系、燃料タンクを収めるスペースの設計が考慮されていませんでした。
・フロント周りの「外科手術」
バッテリーとモーターを積むはずだったフロントセクションに、1.0L 3気筒エンジンとマニュアルトランスミッション、12Vマイルドハイブリッド機構をねじ込むため、バルクヘッドやサスペンションマウント周辺の再設計・金型変更を急ピッチで実施。
・冷却風が足りない
EVの500eはグリルレスに近いツルッとした顔つきでしたが、ガソリンエンジンは冷却水とラジエーターが必要です。
そのためバンパー下部に急遽ラジエーター用の空気取り入れ口を設けるデザイン変更を余儀なくされました。
・シフトレバーとペダルの追加
EV版は「P/R/N/D」のボタン式だったセンターコンソールを破棄し、6速MT用のシフトレバーとクラッチペダルを室内に通すスペースを無理やり確保しました。
■結末と周囲のリアクション
この「無理やりガソリン車に戻された500(海外名:500 Torino / 500 Hybrid)」は、ミラフィオーリ工場で本格生産が開始。
・カーメディアの評価
EV版のしっかりした高剛性ボディに、扱いやすいガソリンエンジンと6速MTが載ったことで、結果的に乗り心地と操縦安定性がめちゃくちゃ良いコンパクトカーになってしまったという、皮肉混じりの絶賛。
・業界の教訓
脱炭素の理想だけでEV専用プラットフォームに全振りすると、市場がハシゴを外したときに莫大な追加改修コストがかかるという、自動車メーカーにとって痛恨の教訓を残すことになりました。
メーカーとしてはプライドを捨てた泥縄式の対応でしたが、現場のエンジニアが超突貫工事でガソリン車として成立させたという点では、実にイタリア車らしい「力わざ」のドラマと言えますね。
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