EUの対中シフトでトルコは巻き添えを食らう?

2026年8月24日

これまで、トヨタ、ルノー、フォード、フィアット、ヒュンダイなど、世界的な自動車メーカーがトルコに生産拠点を持ち、そこで生産した車両を欧州へ輸出してきました。

その理由は、EUとトルコは1995年末から関税同盟を結んでいて、工場製品の関税や数量制限が撤廃されたからです。また、トルコはEUへのアクセスが良く、人件費もEUと比べて比較的安いこともトルコ生産のメリットでした。

トルコがEUの生産拠点から外される?

ところが、中国自動車メーカーの脅威が強くなり、EUは自動車産業をEU域内に残す政策を一気に強めようとしています。ただし、EUが中国メーカーだけを締め出そうとしているわけではなく、欧州委員会が提案した「産業促進法(IAA)」では、EVはバッテリーを除く車両部品の70%以上をMade in EUにすべきだとしていました。

トルコにとって悪夢のシナリオ

もしこの流れがより明確になると、トルコは期待していた巨額投資と雇用を失うことになります。BYDはトルコに大規模工場を建設する予定でした。BYDだけではありません。トルコは関税同盟を活かして自国ブランドのTOGG、BYD以外の中国大手メーカーを引き込んで、世界的なEV生産拠点化を狙っていたからです。

優遇措置を前払いという痛恨の極み

しかも、トルコ政府はBYDを誘致するために優遇措置を前払いしていました。トルコはBYDが自国に工場建設するという約束を信じ、通常なら中国生産の乗用車にかかる30%~50%の追加関税をBYDに対して一時免除して、トルコに輸入していたのです。トルコ政府はBYDに与えていた関税免除措置を「投資に進展が見られない」として停止し、これまで受けた優遇分の返還まで求める可能性があると通告しています(返還されるかどうかは現時点では不透明)。

BYDはトルコ政府を騙すつもりはなかったようです。BYDは2024年にトルコに本気で大規模工場を建設するつもりで、着工にむけて準備を進めていました。BYDは具体的な生産計画や雇用創出プラン等をトルコ政府に提出し、正式な投資契約を進めました。

BYDの担当者がトルコの土地やインフラ調査等を開始し、欧州の部品サプライヤーも動かして、着々と着工への準備を整えていました。ところが着工には至りません。恐らくBYDは悪い予感がしていたのだと思います。そして実際にその悪い予感が現実になる可能性が出てきました。BYDはトルコ生産を諦め、ハンガリー生産に全力投球する方針。

トルコは長い間EU自動車産業のサプライチェーンを支えてきました。そんなトルコを巻き添えにしなければならないほど、EUにとって中国の脅威が増しているのでしょう。


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